海外進出も・大阪名物串カツ発祥の店「だるま」 ── あの名物看板社長に聞く成功の秘訣
今度は世界に広める、これもひとつのロマンでしょ
さらにこうも話す。「ソース二度づけ禁止という文化を、日本中に広めたのは、たぶん、『だるま』です。日本で広め、今度は世界に広める、これもひとつのロマンでしょ。ドリームじゃないですか。どこが出発点か言うたら『日本の新世界やで』って、『日本でも大阪の小さな街、ニューワールドやで』って、おもろいじゃないですか。僕は大阪生まれの大阪育ち、大阪が大好きな人間です。世界に向かってチャレンジしていきたい」 海外店でももちろん二度づけ禁止だが、反応はまちまちで、「これは日本の文化だよ」って謳っているという。 14年前は、串カツ専門店も少なく、量的に言えば、今の10分の1程度だった。そのなかでも、新世界の一部のみが流行っている感じだった、と上山会長は振り返る。「ただ、当時は接客が悪い店が多く、うちはちゃんとしよう、逆に言えば、あの接客レベルなら絶対勝てると思った」とか。串カツ1本の値段は、新世界は基本105円、ミナミは120円、串カツだけでざっと40種類もある。こだわりのソースとの相性バツグンで、名物のどて焼きなども評判だ。
目玉と舌が出る看板、10分に1回タイマーで
だるまの成功の秘訣は、「おもろいことをしよう」というポリシーだ。「たとえば、こんなんしたらおもろいん違うかって、普通の社会人の一般的な人は、『いやいや、それは違う』って。僕は先輩の言うことをボクシング部でずっと聞いていたし、僕ら、縦のすごい関係やったんで、『わかりました。やりましょう』て、とにかく、やってみる。やってみたら、おもしろい。今、表に置いてある等身大の人形かて、あれは別に狙いでもなんでもない、狙ってつくったんと違う」 人形は「難波本店」のオープン時、赤井英和先輩からのプレゼントだった。会長の顔に似せた、石膏で造った置き物の人形で、そこから実物大の人形をつくって店の前に置いたらおもろいん違うか、どうせやったら、目玉と舌が出たらおもろいやろって。それも、ずっとではなく、10分に1回出たらおもろい、それでタイマーをつけたという。 「ゆるキャラってあるけど、こんな怒ってる人形、ありませんがな。あれ見て、みんな、外国人、笑いますよ。僕は、ええやないか、と思うてる。赤井さんらと酒を飲んでて、すべて決まった。目玉が飛び出る時に、『いらっしゃい』って声が出たらおもろいって、それも看板屋さんに頼んだ。そんなアホな発想は、会社でカタい会議してもなかなか出てこない。それから、今度は思い切りでかい看板つくろうって、道頓堀は日本のエンターテインメントや、道頓堀には、カニ(かに道楽)もフグ(づぼらや)も、食い倒れ人形、龍(金龍ラーメン)もおるけど、でも生きてるのはお前だけやろって、そうでんなあ、じゃあ、ごっつい顔をつくったれって、6メートルの看板をつくった。1000万円かかった。普通の会社やったら、費用対効果はどないなっとんねん、って。そんなん関係あれへん。でも結果、それが費用対効果を生んでいる」 数々のアイデアは、みんなで酒を酌み交わしている時に、ぱあ~とひらめき、それをとりあえず実行に移すという。「おもろいことが当たっている。発想は酒飲んでる時に出てくる。酔っ払って街をヘロヘロで歩いている人、昔はようおったのに、今はあまり見かけないでしょ。僕ら、飲んだらヘロヘロやから。そんな生き方もおもろいでしょ。ええ格好はしない。常に謙虚な気持ちを持って、謙虚さを忘れたらあかん」