サンリオが昭和・平成の百貨店“名物催事”を復活、デジタル世代の子どもにあえてアナログ体験「親子で訪れられる場所と思い出を」
■子どもの「特別な場所」百貨店の減少、“サンリオ離れ”…2000年代に終了した背景
かつては、子どもたちにとっても特別な場所だった百貨店。しかし2000年代に入ると、郊外型ショッピングモールの進出やECへのシフト、人口減少などを背景に地方の百貨店の廃業が相次ぐ。かたや都市部の百貨店は、富裕層やインバウンド需要がメインターゲットになり、子どもがワクワクする場所ではなくなりつつあった。 一方で、2000年代はキャラクタービジネスが“子ども向け商売”から幅広い世代へ広がった時代でもあった。中でもサンリオのハローキティやマイメロディは、ティーンから20代女性の間で大ブームを巻き起こす。ところが「実はこの頃、お子さんの“サンリオ離れ”が起きていました」と振り返る。 「2000年代の子ども向け市場で注目されたのが、ジュニアファッションでした。ポップなキャラクターがあしらわれた洋服が子どもたちに大人気となる一方で、サンリオのキャラクターが“子どもっぽい”と敬遠されるようになったんです」 近年、大人ターゲットのキャラクターが続々と登場しているのは、こうした背景もあるのかもしれない。もちろん少子化の影響もあるだろう。『サンリオフェスティバル』が2000年代に終了した理由には、こうした百貨店とサンリオの双方が直面した社会的背景があったようだ。 ■デジタルとアナログ、子どもたちの記憶に残るのは?「あえて昭和~平成期の頃から変えない」 キャラクター消費が子どもから大人へという逆転現象が起きる中、サンリオでは「原点回帰」の意味合いを込めて、『サンリオキッズフェスティバル』 として復活させた。 「2000年代から、大人世代の方々が当社のキャラクターに親しんでくれた理由。それはきっと、子どもの頃の楽しい思い出がベースにあるからでしょう。次世代ファンを作るためにはモノを売るだけでなく、記憶に残る体験が重要なのだと改めて実感しています。近年は百貨店さんも同様に、モノ消費からコト消費に注目されるようになっています」 会場は京王百貨店新宿店(東京)の7F大催事場。マスコットすくいやビニール焼き画、マジックねんどチャーム作り、砂絵作りなど、今時珍しいアナログな遊びが多数用意される。 「コンテンツはあえて、昭和~平成期の頃から大きく変えていません。アップデートした点としては、コロナ禍明けから間もないこともあり、お子さん同士がなるべく接触しないことなど安全面の配慮をしています」 現代の子どもたちは生まれた時からスマホやタブレットに親しんでおり、デジタルの体験型アクティビティも世に溢れている。しかし、そうしたデジタル体験がどこまで記憶に残るのかは、今は過渡期ゆえにわからない。一方で、子どもの頃に親子で訪れた百貨店、いつも一緒だったキャラクターのぬいぐるみといった肌感覚、アナログの記憶が大人になっても深く残り、世代を超えて受け継がれていくのは、過去のサンリオの取り組みからも明らかだ。 「あくまで個人的な感想ですが、流れては消えていくデジタルサイネージ広告よりも、紙のポスターのほうがインパクトが残る印象があります。もちろんサンリオもデジタルには注力していますし、 『サンリオキッズフェスティバル』はYouTubeアニメ『Sanrio characters Super Cute Adventures』の世界観と連動させたものです。デジタル/アナログの両輪に取り組む中でも、特に小さなお子さんには手で触れたり、親子で一緒に何かを作って笑顔が生まれたり、そんな思い出をたくさん残してさしあげたいと考えています。大人にとってはベタすぎるアトラクションばかりですが(笑)、現代のお子さんにとってはむしろ貴重かもしれません」