【プーチン〝圧勝〟のワケ】ロシア支配のための「恐怖・貧困・プロパガンダ」の統治システム 無風選挙を経て通算30年の超長期政権へ
ナデジディン氏にナワリヌイ氏も……反対派を徹底排除
もう一つの要素は、政敵の徹底排除だ。このような指摘もあった。 「プーチン氏は常に、政治的な競争相手を排除してきました。だから、ロシア人にはほかに支持するべき政治家が〝いないように見える〟のです」 実質20年以上に及ぶプーチン政権は、政敵を常に排除することで、安定を保ってきたといっても過言ではない。今回も、その傾向は鮮明に示された。反戦派のボリス・ナデジディン氏の選挙からの排除と、アレクセイ・ナワリヌイ氏の投獄だ。 ナデジディン氏をめぐっては、同氏の陣営が提出した、大統領選出馬に必要な署名数が足りていないなどとし、立候補資格が付与されなかった。「すでに死亡した人の署名が含まれているなど不備があった」との理由だが、ロシアでは反プーチン姿勢を示す人物に対し、出馬が認められない事態はこれまでも繰り返し起きてきた。そのような状況に、市民は誰も驚かなくなっている。 そしてナワリヌイ氏は、北極圏の刑務所に収容され、その地で命を落とした。「自然死」という診断が下されたが、その死を取り巻く状況は、決して〝自然〟とは言い難いものだった。
交渉は「詰め」の段階だった
「私は2月15日夜の段階で、アレクセイが交換で解放されるという、最終的な確認を得ていました。そして、16日に、彼は殺されたのです」 ナワリヌイ氏が主導した「反腐敗財団」の委員長を務めるマリヤ・ペブチフ氏は26日、オンラインで動画を公開し、ナワリヌイ氏が殺害されたのは、その解放の直前のタイミングだったと暴露した。しかしプーチン氏が「ナワリヌイを自由にすることには耐えられないと考えた」と指摘し、最終的に「交渉の材料(ナワリヌイ氏)を排除する(殺す)ことを決めた」と断じた。 ナワリヌイ氏は他の米国人2人とともに、ドイツで服役しているロシア連邦保安局(FSB)元大佐のワジム・クラシコフ受刑者と身柄交換で釈放される準備が進められていたというのだ。 ペブチフ氏は、一連の交渉や、最終的にプーチン氏がナワリヌイ氏を「殺害する」決定を下したという具体的な証拠は示していない。ただ、そのような交渉が行われていたとの指摘に対し、ロシア当局が否定したという事実も確認はされていない。