【プーチン〝圧勝〟のワケ】ロシア支配のための「恐怖・貧困・プロパガンダ」の統治システム 無風選挙を経て通算30年の超長期政権へ
彼は、こう続けた。 「プーチン氏は、大多数の人々が政治に興味を持たないように仕向けている。彼らは、政治といった〝高尚〟なテーマに目を向ける前に、彼らは自分の問題に目を向けなければいけない。人々が心配しているのは、自分自身を今日、どうやって養うかであって、国の未来をいかに良くするか、ということではないんだ」 「典型的なロシア人は、アメリカの影響のせいで生活が悪くなっているとの報道を信じ、月に3万ルーブル(約4万9000円)の給与の半分を公共料金と家賃、残りの半分を、食べ物とウォッカに費やしている」 「ロシアでアルコールが安いのは、決して偶然ではない。政府は価格を(目的に沿って)コントロールしている。男性はウォッカを買いに行き、酔っぱらって週末を過ごし、週明けには町で唯一の職場である工場に行く。そして工場で働く人々は、プーチン氏に投票しなくてはいけない。そうしなければ、彼らは解雇されるか、給与を剝奪される。不満を言えば、即座に強制的な抑圧の対象となる」 ロシアに行くと痛感するのは、その国土の広さだ。しかし人口規模は約1億4000万人と、日本と大きくは変わらない。人口の希薄な地方に住む多くのロシア人にとり、数少ない職場の経営者の意向に歯向かうことは、ほぼ不可能だ。 そのような地方に住む多くのロシア人を「政権支持」に向かわせるために、彼の言葉を借りるならば、「恐怖とプロパガンダ、そして貧困」というシステムが構築、利用されているというのだ。 また、別の知人はこう語った。 「実際には、ロシア人の4割はウクライナ侵攻に反対している。侵攻に反対している人がごくわずかという世論調査は、本当の意見を言えないからそうなっているだけだ」 4割でも、日本人の心理からすれば、決して多いとは言い難い。ただいずれにせよ、ロシアの世論調査で大多数のロシア人がウクライナ侵攻を「支持している」と表明するのは、調査に正直に答えることを危険だと考えるからだというのだ。 ロシア人がプーチン氏を支持するのは、以下に述べるように、決してウクライナ侵攻をめぐる判断だけが理由ではない。しかし、もしウクライナ侵攻に反対する人々がプーチン氏を支持しないと表明するならば、8割前後で推移する同氏の支持率には到達しないのが実情だ。