日本の成長率、実は「G7首位」?働き手中心の指標で見えてくる別の姿 「人口減少の中、驚くほどうまく対処している」と米大学教授
星野さんは「仕事と、家事や育児との両立が難しい状況がある程度解消してきた」とみる。生産年齢人口が減る中で、子育てをしやすい職場環境を整える企業が増えれば、経済の活力を高めることにもつながりそうだ。 生産性を向上させる方法について、星野さんが「誤解があると思っている」と指摘するのは、労働者の役割に関する考え方だ。生産性が低いと言われると、労働者の頑張りが足りないと非難されている気になるが、星野さんは「生産性を高めるには、労働者が頑張れば良いというわけではない。ビジネスをどうやるかという点にかかっている」と強調する。 ▽「おもてなし」過剰は課題 業種別で見ると、金融機関の生産性が高い。それは稼ぎやすいビジネスモデルを構築しているためだと説明する。日本の「ものづくり」を支える製造業が生産性を高めるためには、従業員に頑張りを求めるのではなく、ロボットや人工知能(AI)の活用を一段と進める必要があるとの認識を示した。 星野さんは「おもてなし」の国として知られる日本の課題として、過剰とも言えるサービスの提供も挙げる。例えば、コンビニエンスストアの24時間営業は地域住民にとっては便利で、防犯上も有効とされるが、夜間の利用客が少ない地域で展開すれば企業にとってはコストが増加する一因となる。確かに欧州では、日本のような24時間営業の小売店は珍しい。
ただ、最近では日本でも人手不足を背景に24時間営業をしていない時短店舗数が増加。共同通信の調査によると、2024年2~4月時点で、セブン―イレブンなどコンビニ主要6社の時短店舗数は全体の1割超に当たる約6400店に上った。星野さんは、こうした店舗の増加も、生産性向上につながるとみる。 ▽広がる「カスハラ」対策 星野さんは、大手小売りや外食各社が来店客による店員への理不尽な要求「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の対策に乗り出していることも評価する。かつて日本企業には「お客さまは神様」との意識から、従業員への無理難題にも明確な「ノー」を示しづらい風潮があった。だが、カスハラは離職の深刻な原因となっており、社員を守る姿勢を明確にする動きが広がっている。 過剰なサービスをやめたり、来店客の理不尽な要求に毅然として対応したりすることが、日本ならではの「おもてなし文化」を損なうことにはならない。むしろ労働者が働きやすい環境を整え、生き生きと仕事に向き合うことで生まれるメリットの方がずっと大きいはずだと感じた。