日本の成長率、実は「G7首位」?働き手中心の指標で見えてくる別の姿 「人口減少の中、驚くほどうまく対処している」と米大学教授
▽少子化対策「何よりも優先」 8月下旬、フェルナンデス・ビジャベルデ教授にオンラインで話を聞いた。 ―日本の生産年齢人口当たりの成長率が良好だったという調査結果は、どのように受け止めればよいか。 「私が言いたいのは、日本は不利な人口動態を考慮すれば、きちんと結果を出しているということだ。日本は1970年代に出生率が大きく低下した。生産年齢人口が少ないということは、モノやサービスの生産が少なくなることを意味する。他の先進国でも高齢化が進んでおり、日本は他の先進国の将来の姿だと言える。日本は生産年齢人口が減るという状況にもかかわらず、驚くほどうまく対処していると考えている」 ―日本の労働生産性の低さは各種の調査で指摘されている。この事実とのギャップはどう捉えればよいか。 「水準と率を区別する必要がある。日本の生産性は1990年代に既に低かった。現在でも比較的低いが、成長率としては悪くない。日本の経済政策や金融政策は批判にさらされてきたが、人口動態の悪化という強い逆風を乗り越えてよくやっていると思う」 ―日本の成長には何が必要か。
「まず、少子化対策が何よりも優先される。そうすれば、子どもが成長する20年後に多くの働き手が生まれ、経済を助ける。また、日本の生産性は現在でも比較的低いので、生産性を向上させる対策はどんなものでも有効だ」 ▽問題は「労働者の頑張りではない」 今回の調査結果について、日本の専門家の評価を聞きたくなった。マクロ経済に詳しい第一生命経済研究所の星野卓也主席エコノミストは「イノベーションによって生産性が上がったというよりも、働き手が減る中で経済活動を維持してきた結果ではないか」と指摘する。その上で、女性の労働参加が進んだことも背景にあるとの見方を示す。 日本では、働く女性の割合を折れ線グラフにすると、20代が最も高く、子育て世代の30代でいったん落ち込み、再び40代後半に2度目のピークを迎える「M字カーブ」を描いてきたが、最近は30代で仕事を離れる人が減り、M字の底が浅くなってきている。