「地域にとってのサードプレイスでありたい」 定年後、長年住む松戸で開業:本屋BREAD&ROSES・鈴木祥司さん
トークイベントや読書会を開き、人と集う
時間をかけて作った選書リストは約3000冊。人文、社会系が中心で、「くらし・貧困」「教育・子育て」「人権・ジェンダー」「戦争・国家」「歴史・思想・哲学」「読書・本屋」といったジャンルを設定し、それぞれにテーマを掲げた。例えば、「くらし・貧困」であれば、「貧困をなくすために」「居場所を見つける」、「歴史・思想・哲学」であれば、「自由を求めるものたち」「先人たちの思索/考えるということ」というように。 「新刊本の発注作業はパソコンで行うのですが、1冊ずつクリックしていかなきゃいけないんです。クリックしすぎて腱鞘炎になってしまい、半年以上経った今もまだ腕が痛いんですよね…」 「読書の魅力を発見する」「食べることはどういうことか」「旅すること/歩くこと」といったテーマごとにさまざまな本が並べられている。 オープン当初は、鈴木さんの蔵書も古本として合わせて並べていたが、古本の補充は基本していないため、今は約9割が新刊という。 店の中心にある棚は、移動できるようにキャスターをつけた。これを動かしてスペースを作り、店内でトークイベントや読書会などを行うためだ。また、レジの隣にある壁には大きな有孔ボードを設置。ここで1ヵ月ごとに、テーマを決めて本をセレクトしたフェアを行ったり、近隣に住むアーティストの作品を展示したりしている。 「トークイベントや読書会をすることで、地域外からも人が来てくれたらと思っています。ただ、せっかく開催するのですから、トークイベントの講師は、できるだけ地域に関連する人にお願いしたいと思っています」 労働組合の職員から、本屋のひとり店主という大きな転身を遂げた鈴木さん。組合の仕事は性に合ったこともあり約30年続けることができた。ただし、仕事の内容的に個々の組合員と直接関わる機会はあまりなかった。しかし、今は店を訪れた客と言葉を交わしたり、おすすめの本を紹介したりと、お互いの顔がしっかり見える距離感を楽しんでいる。 「僕が本をよく読むようになったのは高校生くらいの時で、大学時代は社会運動にも多少首を突っ込みました。良くも悪くも団塊世代の影響は受けていると感じていて、社会には表からは見えない裏の部分があり、物事を裏側からも見る習慣がついていったと感じています。本を読むことで、見えていなかった部分が見えてきたり、権力に騙されない知識を付けたりすることができる。この店に来てくださるみなさんと本との出合いに少しでも協力できればという思いがあります」