「地域にとってのサードプレイスでありたい」 定年後、長年住む松戸で開業:本屋BREAD&ROSES・鈴木祥司さん
定年の日を迎える前に、少しずつ準備を始める
定年後に本屋をやってみたいと思い始めた頃、鈴木さんは、都内に点在する、個人が運営する独立系書店に足を運んだ。荻窪の「本屋Title」、田原町の「Readin' Writin' BOOKSTORE」、両国の「YATO」、梅屋敷の「葉々社」など、どれも特色があり、強い衝撃を受けたという。そして、ますます自分でもやってみたいという思いが強まっていった。 場所は長年暮らしている松戸市内と考えていた。鈴木さん自身、都内の職場と家との往復で、地域に深く関わってこなかったという反省があり、定年後は地域に何か貢献できたらと思っていた。定年を迎えてから動き始めては遅いと考え、定年の1年半前から、選書リスト作りにも着手。松戸市内で物件を探し始めたのは定年の約半年前から。物件はそう簡単には見つからなかったという。 「はじめは松戸駅近辺かなと思っていたのですが、いいなと思える雰囲気の物件がなかったんです。若いお母さんやお父さんが子どもを連れて入れるかというと、それがイメージできなかったんですよね。家賃も決して安くはないし。店の広さはそんなに大きくなくてもいいのですが、カフェスペースもほしかったですし」 そうこう悩んでいる時に紹介されたのが、さくら通りに面した建物の1階だった。駅からの距離は徒歩約10分と少々歩くものの、さくら通り沿いという立地と、思い描いていた広さに近かったことから、この場所に決めた。定年退職の日から約2ヶ月後のことだった。 「そんなにお金をかけられないので、壁に白いペンキを塗ったり、本棚を作ったりと、なるべくDIYで内装を仕上げていきました。地域の人に、ここに本屋ができることを知ってもらいたかったので、ワークショップ形式にして本棚を一緒に作ったり、SNSでお店ができていく過程を投稿したりもしました。コストを抑えるためにDIYにしたのに、素材にこだわりすぎて逆にお金がかかってしまったところもあるかもしれませんが(笑)」 28本の本棚はすべて手作り。ワークショップを開催し、製作の一部と色塗りは参加してくれた人たちと一緒に作った。「シンプルな作りの本棚にしたので、素人でも作ることができました」(鈴木さん)。