“失恋ソングの女王”柴田淳、変化した恋愛観 結婚・出産は「人生の一つの選択肢に過ぎない」
柴田淳が明かす恋愛ソングの書き方
シンガー・ソングライターの柴田淳が11月20日に通算14枚目のフルアルバム『901号室のおばけ』をリリースした。柴田といえば「失恋ソングの女王」の異名を持ち、切なく悲しい愛の形をこれまで数多く書いてきた。それが新作では、初めて「愛されている歌」を作り、自身の恋愛観も変化したという。一方で自身のSNSでは、歯に衣着せぬ物言いで世相を斬りまくり、シンガーの顔と素顔とのギャップに魅了されるファンは多い。そこでENCOUNTでは、恋愛をテーマにした柴田のインタビューを紹介。不倫などリアルな恋愛にも切り込んでいる。(取材・文=福嶋剛) 【写真】「染みるぅ」「美しい歌声」柴田淳『綺麗なままで』リリックビデオ ――4年ぶりのフルアルバム『901号室のおばけ』では、セルフラブや希望の歌、誰かを励ます歌など、これまでになかった世界観が歌詞に描かれていてとても新鮮でした。 「ありがとうございます。コロナ禍を機に救命救急士の資格を取りたいと思い、3年間の学校生活を経験しました。デビュー以来、初めて音楽とは違う世界に身を置いて国家資格の取得という大きな目標を達成したことで人生観が大きく変わりました。同時にこの経験が、歌詞の世界観にも大きな影響を与えました」 ――具体的にどんな変化がありましたか。 「今までは『あなたがいなきゃダメなの』『愛が欲しい』『愛がないと苦しい』といった恋にしても人生にしても主人公が先羽詰まって追い詰められている歌が、柴田淳だったと思うんです。でも、今回は今まで絶対に書かなかった『愛されている歌』を無意識に書いていました。客観的に見てもすごく落ち着きのある言葉を使っていますし、明らかに作り手として大きな変化がありました」 ――柴田さんご自身の恋愛観にも何か変化はありましたか。 「ありました。私は思春期の頃から『恋愛なくして生きている意味はなし』『恋が人生をきらびやかにしてくれる』と信じてきて、好きな人を人生の中心に置いてしまう典型的なダメダメなタイプでした。たぶん幼少期の頃から常に愛情に飢えていて、ずっと自己肯定感の低い人間だったことが原因の1つだと思います。だから『いつか結婚しなきゃいけない』とか、『結婚したら子どもを生まなくちゃいけない』って、今まではそんなプレッシャーに縛られていたんです。でも、そんな私が強くなっちゃったんです(笑)」 ――強くなった、とは。 「1人でいることに寂しさを感じなくなりました。独身でいることに引け目も感じなくなり、今は『結婚や出産は人生の一つの選択肢に過ぎない』って達観しちゃった自分がいるんです(笑)。とにかく健康で、好きな仕事ができて、好きなように生活して、ちゃんとご飯を食べていけたら『それだけで十分』と思うようになりました」 ――相手に束縛されるのが嫌になったとか。 「もともと束縛されるのが嫌いな人間なのですが、一番楽なのは1人の時って感じるようになったんです。誰にも邪魔されずに1人でドライブすることも好きなので、今の私のリアルにパートナーが出てこないんです。『これは困ったもんだな』って思うこともあるんですけど(笑)。だから『恋愛は別にあってもなくても』という感じになりました。それより48歳を迎えて、体力やお肌の変化が気になるようになり、恋する時間よりも疲れを取る時間の方が大事なんです」 ――そんな心境の変化の中でも“柴田淳の恋愛ソング”は健在です。あらためて、こだわりを教えてください。 「デビュー当時は、恋愛経験も少なく、想像で書いていたものが多かったのですが、それが大人になるにつれてリアルになり、更には恋愛下手なところが顕著に反映されていくようになりました。そうやって私の紡ぐ曲は私自身の成長と共に変わっていったと思います。今回は自分でも感じるのですが、そのような恋が中心でない自分になったからこそ、どこか余裕のある俯瞰(ふかん)的に見てるような曲が多いと思います」