「10年後、日本の野球界は行きづまる」一人の野球指導者の危機感が、アマチュア球界を変える新リーグを生んだ~野球指導者・阪長友仁のビジョン前編~【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.6】
この夏、阪長友仁が野球界に、また新たな一石を投じる。 阪長は2014年に、堺ビックボーイズの中学部の指導に携わりながら、「LIGA Agresiva(リーガ・アグレシーバ)」を立ち上げ、アマチュア野球界に大きなうねりをつくりだしてきた。 【動画】慶應義塾、仙台育英など24年の高校野球をリードするのは? リーガ・アグレシーバは、全国各地の高校野球部が公式戦で行われるトーナメントの大会とは別に、選手たちの未来にフォーカスしたリーグ戦形式の取り組みである。そこでは、独自のルールを設けて試合を行っている。例えば、投手の障害予防のため、1日の制限数は100球とし、50球投球した場合は中1日休み。80球以上の場合は中4日休みとなる。また変化球もカーブとチェンジアップのみで変化球の割合は25%以下と定めている。 さらに使用するバットも、打者の将来性ならびに投手の障害予防などの観点から、2017年から木製バットか低反発のバットを推奨。ほかにも、リーガ・アグレシーバでは、スポーツマンシップ講習などの取り組みを行い、選手の長期的な成長を図る活動など行っている。 現在、34都道府県180校の学校が参加し、各地でリーグ戦を行いながら、選手個人や指導者たちの成長のきっかけとなる学びの場をつくっている。
リーガ・アグレシーバ立ち上げの際の阪長の思いやきっかけは後述するとして、この夏には、全国初の取り組みとなる高校3年生を対象にしたサマーキャンプを北海道で行う予定だ。この「LIGA Summer Camp 2024」では、全国各地の高校3年生80名が北海道に集まり、リーグ戦形式で試合を行う。1チーム20名がエントリーでき、顔も名前も知らない初対面の選手たちが一同に介し、約10日間、6~8試合のリーグ戦を行うのだ。 「野球界においても、スポーツ界においても、またそれ以外の業界においても、既存の固定観念を打破していく取り組みにしたいと思っています。今回のサマーキャンプを通じて、日本の社会が変わっていくきっかけになることが一番の狙いであり、みんなでより豊かに生きていける時代にしていきたいという思いがあります」と語る阪長だが、何を思い、何に出会い、今の活動を続けてきたのだろうか。 今回は、阪長の転機ともなったドミニカ共和国の野球事情も合わせて紹介をしていきたい。
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