亡き友への思いを胸に万感の初マウンド 鹿児島城西・八方 センバツ交流試合
◇○加藤学園3-1鹿児島城西● 悔しさを闘志に変えた。初めて甲子園のマウンドに立った鹿児島城西のエース右腕・八方は八回、浮いた直球を右中間に運ばれ、ランニングホームランを許した。「すごく悔しい1球」。降板して中堅の守備に回ったが、気持ちは切り替えられた。亡き友への思いがあったからだ。 【鹿児島城西VS加藤学園 熱戦の様子を写真特集で】 3点を追う九回、先頭打者で打席に入った時には「絶対に勝つ」と奮い立った。左前打で出塁すると、代打・砂川の二塁打と敵失で本塁に生還しガッツポーズ。追い上げも及ばず敗れたが、最後までチームを鼓舞し続けた。 小学5年生の時、親友だった同級生の金高尚矢さんが白血病にかかり、中学1年で亡くなった。コロナ禍で次々と試合が中止となり、やる気を失っていたときだった。金高さんの両親が書いた本を読み直し、「生きている限り、どんな小さなことでも全力でやり遂げよう」と決意した。 練習も制限される中、工夫を続けた。フォークボールが代名詞のプロ野球ソフトバンク・千賀の映像を参考に落ちるボールを磨いた。「直球よりもフォークの腕の振りを速くすると(千賀が)話していた」。140キロ台前半の直球と落ちる球を軸に三振で三つのアウトを取った二回は、練習に取り組んだ成果だ。八回途中3失点、8奪三振のマウンドを「狙って三振が取れた。手応えもあった」と満足げに振り返った。 「全力でできた」と胸を張ったエースだが、「後輩たちには、甲子園初勝利を成し遂げてほしい」と話した表情は少しさみしげだった。【吉見裕都】