カワサキ“ダブサン”は不思議なバランスがイイ!!! 再考したい650-RSの魅力とは?
鉄の“ジャジャ馬”を感じさせる乗り心地
大野:エンジン始動はキック式ですね。先に乗った「マッハIII」もキック式だったけど、2ストロークだったので軽くかかりました。でも4ストロークのW3は重い! 初めはぜんぜんかけられなかったけど、キックレバーを「えい!」と、思い切り踏み下ろしたら、なんとかかけることができました。 カワニシ:踏み下ろした反動で勢いよく戻ってきたキックレバーに、足の脛を直撃される“ケッチン”も旧車あるあるです。あれ、メチャクチャ痛いんだよんなぁ……。 大野:ドッドッドッドッ……っていう低い排気音がいいですね! カワニシ:2本出しのキャプトンマフラーから吐き出される歯切れのいい排気音はW3の美点です。ゼッツーの甲高い4気筒サウンドとは対照的ですね。 大野:バーチカルツイン(vertical twin/シリンダーが地面に対して垂直に屹立しているためこう呼ばれる)の鼓動もスゴいですね。こんなにブルブルと振動が伝わってくるバイクに乗るのは初めて。車体、ブレーキ、クラッチ、すべてに重さを感じて、「これが旧車なんだ」って感じです。 カワニシ:この頃のバイクって、いたる所に金属部品を使っているから、実際、車重もあるんだけど、そのぶん各部のつくりに重厚感があるのが魅力ですよね。エンジンや排気音だって、今だったらこんなに勇ましい音は出せない。 大野:最初はクラッチを上手く繋げなくてエンストしちゃったけど、慣れてくると「このジャジャ馬を走らせているんだ!」と思えて嬉しく、楽しくなってきて、「この感覚、好きだなあ!」と思いました。
Wシリーズ有終の美を飾ったW3
カワニシ:先にも言いましたが、W3のルーツであるメグロK1は、日本メーカーの技術が足りなかった時代に、英国BSAの「A7」というバイクに倣って作ったモデル。カワサキのWシリーズはそれを独自に進化させていったので、W3に至っては1950年代のバイクに1970年代の技術がくわわった、不思議なバランスで成り立っているんです。ブレーキはカワサキ車としては初めてのダブルディスクを装備していたりするし。 大野:僕はそこまでは詳しくわかりませんが、乗っていて「すごくカタいバイクだなあ」という印象でした。乗りにくいんだけど、言い換えれば重厚感があって、決してイヤではなかった。むしろ乗っているうちにだんだんと愛おしく感じられてきましたね。 カワニシ:大野さんもついに絶版旧車の魅力にハマってきたのかな(笑)。W3は登場したときから既に“旧い”雰囲気だったと言いましたが、じつはそれが人気となって、1974年に生産終了が決まるとユーザーから惜しむ声が上がったんです。それでカワサキが最終型を増産したり、中古車が新車よりも高い値段で取引きされたりしたそうです。 大野:いかにオートバイらしい正統派のスタイルは、いま見てもカッコいいですよ。バーチカルツインのエンジンの造形も美しいですよね。 河西:メグロK1から発展したWシリーズはこのW3で終了したんですが、じつはそれから20数年を経た1998年にWの復刻版と言えるW650が登場。翌1999年には年間販売台数2位となるほど売れたんです。それからW800へと進化して現在もなお人気のモデルになっていることを考えると、Wはカワサキにとってとても大事なヘリテイジと言えますね。僕は自分のW3に乗っていて現行のW800に乗るライダーを見かけると、つい「こっちがオリジナルだよ」って優越感に浸っちゃいます。 大野:うわ、イヤな感じ!(笑) でもその気持ちわかりますけど。そのバイクの歴史ごと“所有”する感覚が、絶版旧車に乗る喜びなんでしょうね。あぁ、すっかり僕も欲しくなっちゃったなあ!