対中投資が急減?:中国の外資企業に何が起きているのか
3大業種の外資企業の命運は重大な意味を持つ。彼らは言わば「親亀」であり、自動車の例を取るなら、親亀の背中の上に部品サプライヤーだけでなく、銀行、商社、コンサルなどの子亀、孫亀がたくさん乗っている。今後親亀が衰退していけば、子亀以下は自力で生存することは難しくなり、在中国外資ビジネスのエコシステム全体も衰退して、中国と西側の経済的結びつきの希薄化が一段と進行する恐れがある。 反スパイ法による外資企業の投資意欲減退も憂うべき問題だが、中長期的には、この3大業種の外資企業の行方の方がより構造的かつ深遠な影響を及ぼしそうである。
注釈
(※1) 「中国、2023年の外資利用額は前年比8.0%減、製造業・サービス業ともに減少」(ジェトロ・ビジネス短信2024年01月25日 (※2) 「中国の対内直接投資急減の実相」(2024年2月28日みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部アジア調査チーム 主任エコノミスト 月岡直樹) (※3) 中国の地場企業は外資企業の優遇を得たり、企業を売却するときの手間を省いたりするため、いったん香港に会社を出して、そこから外資企業の装いで国内に投資したりしている。 (※4) “Most European investments in China from a few firms, study says”(Bloomberg2022年9月15日) (※5) 2023年の対内直接投資、前年比8割減も、撤退検討の企業は限定的(ジェトロ・ビジネス短信2024年02月21日)
【Profile】
津上 俊哉 現代中国研究家・(公財)日本国際問題研究所客員研究員。1957年生まれ。1980年通商産業省入省。在中国日本大使館経済部参事官、通商政策局北東アジア課長、経済産業研究所上席研究員などを歴任。「中国台頭 日本は何をなすべきか」(日本経済新聞社/2003年)でサントリー学芸賞。近著に「米中対立の先に待つもの」(日本経済新聞社/2022年)。