産業技術総合研究所（産総研）は23日、3Dプリンターに活用する金属粉末粒子を効率的に球状に加工する技術を開発した。プラズマ加工技術を用いたもので、金属粒子を球状かつ形状を均一にすることで充填密度を向上し、高品質な造形物の形成を実現。さまざまな形状の粉末を無駄なく使え、低コスト化にもつながる見通し。 　産総研製造技術研究部門の板垣宏知主任研究員は、プラズマで加熱した金属粒子を気流や圧力を制御することで真球状に加工する技術を開発した。 　金属積層造形では主に粒径が10～150ミクロンの金属粉末が使われる。高品質な製品を作るには、造形材料となる粉末の形状が真球に近く粒径分布や形状が均一で欠陥が少ない金属粉末を使う必要がある。また粉末粒子間の隙間が多く含まれる低充填密度の粉末では、造形物の中に空隙や亀裂といった内部欠陥を引き起こす原因となり、製品品質低下や信頼性の問題につながる。 　今回の研究ではプラズマ加熱処理中に気体分子の動きを制御するための圧力制御を利用し、金属積層造形に適した粒径で真球に近い形状の金属粒子と副産物として発生する粒径1ミクロン以下の微細粒子を効率的に分離する装置を開発。さらに緩い充填方法でも充填密度を高くできる金属粉末を作製することに成功した。この技術はさまざまな形状の金属粉末を積層造形に適した粒子へ加工可能。安価な材料や使用済み粉末も利用できるため、高品質な製品を低コストで作ることが可能になる。 　産総研では今後、効果的なプラズマプロセスと造形プロセスの構築を進める。また積層造形に利用され品質が低下した金属粉末の特性再生技術（リサイクル技術）として、金属粉末の再利用性も含めた積層造形による評価を実施。金属粉末製造プロセスの低コスト化によって、金属積層造形技術の市場普及に貢献できる産官連携活動を推進していく。