海底の坑道には、今も183人の遺体が閉じ込められている…82年たっても政府が調査に後ろ向きな理由 山口「長生炭鉱」の犠牲者と、戦没者との差
2004年の日韓首脳会談で、当時の盧武鉉大統領が小泉純一郎首相に解決を要請し、小泉氏が「何ができるか検討したい」と応じた。 その後、2006年から厚労省などは各地で実地調査を開始。2016年までに計237回調査したが、遺骨返還には結び付いていない。 朝鮮人徴用工の遺骨とは逆に、日本政府は戦没者の遺骨収集を重要な責務と位置付け、収集事業を進めている。2029年度までを「集中実施期間」と定め、これまで調査できていなかった国内外の埋葬地約3300カ所の現地調査を実施。海中に沈んだ遺骨も、観光ダイバーなどの目に触れて遺骨の尊厳が損なわれているような場合には、収容を検討するとしている。 厚労省はこれまで、南太平洋のミクロネシア連邦チューク諸島沖で、沈没した日本艦船などに残っていた「海没遺骨」を収容した。硫黄島では、地下探査レーダーを使って、地下にある戦没者の遺骨を調査している。つまり、「目に見える遺骨」以外も収集を進めている。
しかし、長生炭鉱については否定的だ。理由は、炭鉱犠牲者は戦没者ではなく、民間人徴用工であり、国の遺骨収集事業の対象ではないというのが国側の説明だ。 ▽死者を弔う気持ちは同じ 朝鮮半島出身者の遺骨問題に詳しい福岡教育大の小林知子教授は、日本政府の姿勢についてこう指摘する。 「政府は太平洋に沈む日本人戦没者の遺骨収集は進めている。技術問題を完全にクリアしているわけではないが、長生炭鉱では『見える遺骨』しか調査しないと基準を設けるのは、妥当性に欠ける」 「死者を弔う気持ちは宗派や国籍が違っても共通するもの。遺族の気持ちを尊重し、国の予算で調査することが日韓関係を切り開く鍵になる」 ▽82年目の追悼式 事故から82年となる今年2月3日も、小雨が降る中、追悼式が開かれた。 参加者は山口県内の中学生や韓国の犠牲者遺族ら、約130人。韓国遺族会の楊玄会長はあいさつでこう述べた。