このケーキの価値は100万ドル CelonisがNXホールディングスの価値向上を祝う
プロセスマイニングのCelonisが、Celonis導入で「100万ドル以上の新たな価値」を創出した企業に贈る“バリューケーキ”のイベントが、NIPPON EXPRESSホールディングス(NXホールディングス)で開催された。同社はプロセスマイニングに加えて、先進的な「タスクマイニング」にも取り組んでおり、世界的にも注目を集めるCelonis導入事例だという。 【もっと写真を見る】
プロセスマイニングプラットフォームを提供するCelonisが、2024年11月18日、東京・人形町のNIPPON EXPRESSホールディングス(以下、NXホールディングス)本社オフィスで“バリューケーキイベント”を開催した。NXホールディングス 常務執行役員 経営戦略本部長の大槻秀史氏をはじめとする同社関係者や、Celonis社員など約20人が参加。Celonis 社長の村瀬将思氏から大槻氏に、トロフィーとケーキが贈呈された。 NXホールディングスは、プロセスマイニングの先を行く「タスクマイニング」など先進的な活用に取り組んでおり、Celonisの年次イベント「Celosphere 2024」でアジア企業初の登壇を果たしたほか、卓越した成果を上げた企業に贈られる「Regional Game Changer Awards」も受賞している。 Celonisの導入で「100万ドル以上の価値」を創出 バリューケーキイベントは、Celonisの導入を通じて「100万ドル(およそ1億5000万円)以上の新たな価値」を創出した企業に対して、“バリューケーキ”と呼ぶ特別なケーキと“バリューストーントロフィー”を贈呈し、プロジェクトの参加者とともに価値創出を祝うものだ。 村瀬氏が独自に考案し、昨年から開始したイベントであり、贈呈されるケーキには、贈呈先企業の事業内容やロゴなどを反映したデコレーションが施されている。これまで国内企業6社で開催されているが、メディアへの公開は今回が初めて。Celonis導入が価値創出につながった日本企業が増加していることを裏付けるものとなっている。さらに今年からは、ドイツ本社をはじめとするCelonisの欧州拠点でも、このイベントが開催されはじめているという。 NXホールディングスの大槻氏は、「バリューストーントロフィーとバリューケーキを受け取ることができ、光栄に感じている。グループ内でCelonisを活用できる領域はまだ多い。業務プロセスの標準化や効率化は、海外展開においても活用できるだろう。今後も、良きパートナーとして支援してくれることを期待している」と語った。 同社では2021年10月から、Celonisの活用を開始。翌2022年1月からは、100社以上の子会社の経理業務プロセスの標準化と効率化を実現する手段として「Celonis EMS(業務実行管理システム)」を順次導入。その後、Celonisが提供する「Object-centric process mining(OCPM)」やAI機能などを導入し、プロセスマイニングだけでなく、個人単位のタスクを最適化する「タスクマイニング」(後述)による成果にも注目が集まっている。 NXホールディングスは、10月にドイツで開催されたCelonisの年次イベント「Celosphere 2024」でも、アジア企業として初めて導入事例講演で登壇。同時に、日本企業で初めて、プロセスインテリジェンスで卓越した業績を上げた企業を称える「Regional Game Changer Awards」を受賞している。 “勘と経験”から“データ”に基づく業務プロセス改善へ NXホールディングス 経営戦略本部 経営プラットフォーム構築推進室長の日下昌彦氏は、「Celonisの導入成果を基に、フロント業務にも活用したいという要望が出ている。こうした良い流れを生かして、グループ内に『改善し、チャレンジしていく』精神を広げたい」と述べた。 また同社 経営プラットフォーム構築推進室 専任部長の山口崇幸氏は、導入当初の様子を「これまで“勘や経験”でやってきたものが、Celonisを使うことで、すべてがデータ化され、可視化されることに驚いたのを覚えている」と振り返った。 Celosphere 24で登壇した同社 マーケティング部 専任部長の福田和光氏は、「Celonisは見える化において非常に強力なツール。その確信があるので、海外のイベントでも自信を持って当社の事例を紹介できた。NXホールディングスの取り組みを世界に発信できたと思っている。フロントシステムには宝の山が眠っている。今後は、そこにCelonisを活用していきたい」と語った。 バリューケーキイベントには、同社へのCelonis導入をサポートしたデロイトトーマツコンサルティング シニアマネージャーの山田雄大氏、Celonis リードコンサルタントの尾上健太郎氏も出席した。 デロイトの山田氏は、「最初はCelonisがどんなソリューションなのかがわからず、半信半疑のところがあったが、Go liveしてからデータが溜まりはじめると『ここまで見ることができるのか!』と驚いた。NXグループ全体の価値向上に向けて、欠かせないツールだといえる」とコメント。またCelonis 尾上氏は、「タスクマイニングを活用した事例は世界でも最先端のものであり、世界各国からも関心が集まっている。Celonisによる価値を一緒になって高めていきたい」と述べた。 個人の業務を可視化する最先端の「タスクマイニング」にも取り組む NXホールディングスは、NXグループ(旧称:日本通運グループ)のホールディングス体制移行に伴い、2022年1月に設立された持株会社だ。 NXグループでは、2019年から「プロジェクトITS(IFRS、TAX、SAP)」を推進し、「SAP S/4HANA」によるグループ経理基盤を構築。2022年1月の稼働にあわせて、Celonis EMSを活用した業務プロセスの可視化と分析を開始した。これにより、担当者の“経験と勘”に頼らない業務プロセスの整流化、事実に基づく問題点の特定、原因の検証が可能になり、改善施策を打ちやすくなったという。 また2023年10月には、経営プラットフォーム構築推進室(MPD)を新設し、SAP S4/HANAを海外のグループ企業へ展開するとともに、資金・税務プラットフォームを構築。加えて、今年には調達・購買業務に「SAP Ariba」も導入している。 これらのソリューションに、Celonisのプロセスマイニングを適用することで、プロセスのボトルネックを可視化でき、改善活動とシステム導入をスムーズに進めることができているという。 さらに2023年からは、世界的にも最先端であるタスクマイニングの取り組みも開始している。 プロセスマイニングはシステム単位でログを収集し、可視化と分析を行うものだが、タスクマイニングはさらにその先を行き、“個人のタスク単位”で業務を可視化、分析する。具体的には、業務PCから操作データを収集、分析することで、個々人が実行する業務プロセスを可視化する。さらには個人ごとの業務処理の違いも見えるようになるという。 タスクマイニングを行うと、管理者が“経験と勘”で考えていたのとはまったく別のところでボトルネックが浮き彫りになることも多いという。これにより、感覚値や経験値に基づく判断ではなく、根本的な原因にアプローチした改善が可能になる。 たとえば、業務処理が遅い社員のPC操作ログを分析したところ、「Microsoft Teams」のチャットを開き、上下にスクロールしている時間が長いことが分かった。社員に確認したところ、業務上の不明点をTeamsの過去のやり取りから探す作業が多いことが判明。そこで、Teamsの運用を見直し、業務マニュアルをアップデートするといった改善アクションをとり、課題を解決したという。 さらに、タスクマイニングの導入によって、社員個々人の業務処理水準を平均と比較することも可能になった。社員の「自分の水準はどうなのか」という不安を解消するとともに、習熟度の可視化や目標設定にも活用し、社員のモチベーション向上につながっているという。業務処理が速い人/遅い人の操作を分析して、データに基づく業務改善も可能だ。 NXホールディングスでは、こうしたファクトから得られる業務マネジメント変革の実現や、ファクトに基づいた人材配置、業務ルールやプロセスの見直しにもつなげていると説明した。 文● 大河原克行 編集● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp