「セックスするならコンドーム」の連呼やめた「コンドームの達人」が駒場東邦の生徒に問う、「正解依存症」という病
■ アダルトビデオは1人で見てはいけない エイズ患者もいまは安全な方法でセックスを楽しんでいるという。パートナーにうつさないので、患者数は減っている。いずれエイズという病気が撲滅される日が来るだろうと岩室さんは言う。 エイズ感染を防ぐために気をつけなければならないのが、輸血、入れ墨、薬物、セックスの4つだ。 「薬物については『ダメ絶対!』という教育をみなさんも受けたと思うけど、薬物はなぜ再犯をくり返すのか。医者には薬物依存症通報義務はありません。彼らは病気です。なのに日本ではまだ取り締まり厳罰化。話せばいいんです。熊谷晋一郎という医師が『自立とは依存先を増やすこと』と言っていました。みんな誰かに依存して生きています。ひとに迷惑をかけないひとなんているわけがない」 そこから岩室さんは、性教育とは直接関係ない話を展開する。 「『絆(きずな)』のもうひとつの読み方を知っていますか? 『ほだし』です。手かせ足かせや迷惑という意味です。でもその迷惑はほどほどじゃなきゃいけない。ほどほどの迷惑を我慢できるひとは、ちゃんと仲間になれる。信頼、つながり、おたがいさま。この3つがそろっているひとは、自殺が少ないし、トラブルにも巻き込まれにくいし、長生きで、教育的にもいいと言われています」 マスターベーションに関しては、想像力をフルに活用するように伝える。アダルトビデオは絶対に1人で見ないようにとも。お互いに声を出して、「こんなのありえねーよ」って言いながら見るのが正しい見方だと。 2次元もいいけれど、ぜひリアルにチャレンジしてほしいとも。理由は、2次元と違って、リアルは思い通りにならないから。リアルに好きなひとからフラれたら……友達に愚痴ればいい。愚痴れる友達がいることが大切。
■ 「性的同意」なんて言葉は本来、必要ない 間違った自慰行為は膣内射精障害を招くことも付け加える。昔は友達同士でオナニーの話もできたけれど、いまは恥ずかしくてできないから、自分だけおかしな方法でしていても気づけないのだと岩室さんは指摘する。 「でもそのうちセックスする場面があると思います。そのときはまず自分の性欲に向き合ってください。オナニーの前と後とで自分の性的な興奮がどれだけ収まっているか実感してください」 相手を欲するのは単なる性的欲求の高まりなのか、愛なのか、見極めろという意味が込められているアドバイスだろう。 「愛の反対はなんですか? 愛の反対は無関心ですよね。『好きだよ。愛してるよ。でもセックスはしたくない』。そういうこともあるんです。『でも愛してるからしようね』。それは、体に関心があるだけで、相手の心には無関心ですよね。愛してないじゃないですか」 性的同意や不同意性交罪について、その言葉を使わずにまず本質を伝えている。 「いまは性的同意という言葉もできました。たとえ夫婦であっても、むりやりセックスしたら、犯罪になります。でもそういう話じゃなくて、相手が嫌がっているのにむりやりするっていうのは人間的には考えられません」 相手が嫌がることをするのはダメ。どさくさまぎれももちろんダメ。たったそれだけのことを説明するのに、性的同意なんて言葉を持ち出す必要もないという原点に立ち戻る。 「では、最後にコンドームの達人講座をして終わりたいと思います!」 生徒たちからは拍手喝采。持ち歩くときはハードケースに入れることなど、コンドームの正しい使用法を事細かに説明して講演は終わった。