1億個が時速2万5千キロで浮遊…宇宙ゴミ(スペースデブリ)の脅威と地球規模の対策とは?
・静止軌道 「これは地球から36,000km付近の軌道で、気象衛星や放送衛星などに使われています。地球の自転と同じ周期で公転する軌道です。同じスピードで動いているため衛星が止まっているように見えることから静止軌道と呼ばれます。広範囲で地球を定点観測でき、常に通信や放送を提供できることから、極めて有用性の高い軌道ですが、原理的静止軌道はたった1本しか存在しないので、このたった1本の“紐”を世界中で分け合って使っており、専門家の間ではすでにこの静止軌道の混雑も懸念されています。この静止軌道の近くで事故が起きると非常に深刻な事態が懸念されます。 また、低軌道であれば、デブリを大気圏に再突入させることで消滅させられますが、静止軌道から大気圏まで衛星を落下させるためには非常に大量の燃料が必要になるので、実際は困難です。そのため、役目を終えた衛星は、活動している衛星の邪魔にならないように静止軌道の外のいわゆる“墓場軌道”に移動させます。移動するだけなので処分されることなく、どんどんデブリが溜まっていきます。問題を先送りにしている状態のため、いずれは除去が必要になるでしょう」
宇宙旅行が現実化すれば、デブリ被害も増加?
最近ではアメリカの民家にデブリが直撃し、あと少しで人命に関わる事故になるところだった、というニュースが話題になりました。 「一般的に知られていないだけで、実はかなりの数のスペースデブリが落下しています。スペースデブリのほとんどは、大気圏に落ち燃え尽きるように設計されています。また近年では、運用されている衛星は、太平洋の真ん中など危険性の少ない場所に、軌道を制御することで落下させています。 ただ、衛星によっては、一部燃えにくい部品を使用している場合もあり、また衛星が不具合などで制御を失うと、このように安全な場所に落下させることができなくなります。このように安全・確実に落下させることも、衛星の利用が盛んになるにつれて重要になってきます。これまでも、燃え残った衛星の残骸等が落下して損害を与えたという事故も発生しています」 宇宙旅行が実現する未来で、その影響に変化はあるでしょうか? 「人が搭乗する有人の宇宙船に対しても、デブリは人命に関わる深刻な問題です。すでにISSには小さなデブリが日々衝突し、機体にはでこぼこと穴が開いています。ISSは防護板で何重にも守られているため多少の穴は影響ありませんし、大きなデブリは追跡しているので事前に避けることもできます。しかし、数が増え制御できないほどになってしまえば、ISSで働く方々の命に関わってくるのです」