1億個が時速2万5千キロで浮遊…宇宙ゴミ(スペースデブリ)の脅威と地球規模の対策とは?
衛星との衝突が原因? スペースデブリが発生する原因
そもそもなぜ、デブリが発生するのでしょうか? その原因は主に2つあるといいます。 ・衛星を打ち上げる一連の流れで発生するデブリ 「衛星を打ち上げるためのロケットが宇宙空間で分離されたものや、ミッション遂行中に捨てられた部品、また、燃料が切れたり故障したなどの理由で役目を終えた本体も含みます。 近年は、民間が人工衛星を打ち上げるなど、宇宙開発が以前よりも身近なものになり、スターリンクを代表とする多数の衛星を活用した“コンステレーション”と呼ばれるサービスのように、人工衛星の利用の仕方が多様になることで、打ち上げられる衛星の数も増えています。 衛星の寿命は、衛星の軌道や用途、設計などにより異なりますが、2年から10年ほどです。この寿命を終えた衛星は、近年では大気圏に突入させて軌道から取り除くように運用されていますが、不具合などで地球からのコントロールを失い、そのまま放置されるとスペースデブリと化します」
・衛星とスペースデブリの衝突 「この衝突によって新たにできるデブリの発生は、広い範囲で軌道環境を汚染するという意味で深刻です。衛星同士がぶつかり合い爆発すると、破片が勢い良く飛び散ります。初速が加わることで、発生したデブリが元の衛星の軌道から大きく広がることになります。破片が広がれば新たな衝突を生み、さらに破片が増えるという悪循環に陥ります。 2009年に、アメリカのイリジウム社の通信衛星イリジウム33号と、すでに使用されていなかったロシアの軍事用通信衛星コスモス2251号が衝突し問題になりました。この衝突によって、少なくとも数百個以上のスペースデブリが発生しました。 一方で、その衝突を故意に行う衛星破壊実験を中国が2007年に行い、飛躍的にデブリが増えた事例もあります」
もう衛星が打ち上げられない? 宇宙旅行も危険に? スペースデブリが及ぼす影響
2021年には、実業家の前澤友作氏が日本の民間人で初めてISSに滞在するなど、一般人の“宇宙旅行”も夢ではなくなってきました。このままスペースデブリを放置するとどうなるでしょうか? 「スペースデブリが飛んでいる主な2つの軌道があります。『低軌道』と『静止軌道』です」 ・低軌道 「地上から200kmから1000kmの範囲の軌道で、ISS(国際宇宙ステーション)や、インターネットを通信するための衛星コンステレーション、地球をさまざまな角度で観測する地球観測衛星などが打ち上げられる、もっとも多く使われている軌道です。 先ほど説明したように、低軌道には1億個以上ものデブリが周回しています。衛星とデブリが1km以内に接近するニアミスは、一日に数百回起きており、デブリを避けるための衛星の軌道修正も日に何度も行われている状態です。放置すれば猛スピードで周回するデブリの衝突により、さらにデブリが増え、地球を覆い、衛星の打ち上げもままならなくなるでしょう。持続的に宇宙開発を続けることが難しくなります」