メルセデス・ベンツが考える次世代のオフローダーは異次元過ぎた! 新型G580 with EQ Technologyの実力に迫る
メルセデス・ベンツが投入したGクラスのBEV(バッテリー式電気自動車)モデル「G580 with EQ Technology」に、サトータケシが試乗した。電気のGクラス、その実力はいかに!? 【写真を見る】新型G580 with EQ Technologyの全貌(23枚)
電気自動車が運動性能の面でもエンジン車の常識を覆す
電気自動車というと、走行中に排出ガスを出さないエコカーというイメージを有する人が多いだろう。もちろんそれも大事なポイントではあるけれど、それだけではない。メルセデス・ベンツのGクラスに新たに加わったG580 with EQ Technologyは、オフロードとオンロードで行われた試乗会で、電気自動車が運動性能の面でもエンジン車の常識を覆すことを示してくれた。 びっくりするような走りは、4輪それぞれに配備された4つのモーターを個別に制御することで実現する。モーターひとつあたりの最高出力は146ps、最大トルクは291Nm。つまりメルセデス・ベンツ「A180」相当のパワーで1本のタイヤを駆動していて、それが“✕4”ということになる。 では、この仕組みからどんな走りが可能になるのか。まずはオフロードコースの広場で、一番わかりやすい「G-TURN」と「G-STEERING」から試す。 手順としては、まずシフトセレクターでN(ニュートラル)を選び、「LOW RANGE」のスイッチを押す。するとギア比がデフォルトの1:11から1:21になり、トラクション性能の高いオフロード仕様のセッティングになる。もうひとつ、ダイナミックセレクトを操作して、走行モードは「ROCK」モードを選ぶ。 ここで「G-TURN」のスイッチを入れ、回転したい方向のパドルを引いてアクセルペダルを踏み込むと、その場でくるくると回転をはじめた。まるで遊園地のコーヒーカップだ。アクセルペダルを戻すと、その場で回転は止まる。クルマでこの動き方ができるのか……、と思わず口をあんぐりと開けてしまった。 ちなみに、がけ崩れや倒木などで行く手を阻まれた狭い未舗装路で、“回れ右(左)”をするときに使う機能で、一般道で使うことは許されていない。 「G-STEERING」は後輪軸を中心に、小さな回転半径で未舗装のコーナーを曲がる機能。試してみると、イメージとしては内側の後輪がロックさせて、ドリフトしながらクルッとカーブをクリアする感じだ。ただし4輪それぞれのモーターが個別に制御されているから、クルッと回ってそのままスピンということはなく、きれいに曲がってくれる。 これも未開のオフロードに分け入るための機能で、一般道では使えないけれど、どんな人でも“ドリキン”の気分を味わうことができる。 こういった離れ業というか飛び道具もスゴいけれど、普通のオフロード性能も圧巻だ。 大きなコブ山が連続するモーグルセクションでも、壁のような斜面を登って下るマウンテンセクションでも、「LOW RANGE」に入れておけば鼻歌まじりでクリアできる。 感心するのはただ安定して走るだけでなく、オフロード走行が楽しいと思える点。 這うようなスピードでの微妙なアクセル操作にも、モーターは電光石火のレスポンスで、なおかつ繊細に反応してくれるから、アクセルコントロールが痛快なのだ。 試乗前は、オフロードとBEVの相性ってどうなのよ? と、思っていたけれど、試乗を終えたいまは断言できる。オフロードこそBEVです。まぁ、未開の山奥に充電設備はない、という点は考えなくてはいけないが。