伝説の剛速球投手・山口高志氏は見た プロ野球生き残り「4割の壁」を越えた男たちの流儀
メリハリはシーズンでも。登板日前日から、山田氏は、ほぼ話さなくなったという。「雑談もしない。ピリピリ感が周りにも伝わってくる。それほど集中していた」とし、「当時は、精神力の強い人が生き残っていた。そのメリハリが秘訣だったのでは」と振り返る。
■いつもポジティブ 福原忍氏
阪神で先発、中継ぎ、抑えとフル回転した元投手、福原忍氏(47)=現阪神2軍投手コーチ=は、いつもポジティブ思考だったという。
平成23年に中継ぎに転向したが、失敗したときも翌日まで引きずらず、すぐに気持ちを切り替えた。山口氏いわく、絶対的守護神だった藤川球児氏もポジティブ思考の持ち主だったが、それ以上だったという。「球児はガーンと落ち込むとき、考え込むときもあれば、ポンと明るくなって、活躍する。でも、福原は波が少なく一定していた」という。
山口氏が阪神コーチ時代に出会った福原氏は、右肩を手術したどん底の時。「それゆえ、余計にポジティブ思考に切り替えたのだと思う」と推察する。「ネガティブにならない選手ほど、長く活躍する」。その言葉通り、後に福原氏は26、27年にセ・リーグ最優秀中継ぎ投手に輝いた。
最後に、3投手に近づくには何が必要なのか。山口氏は「成長段階では、特別な練習はいらない。野球選手の練習をしてほしい。内野も外野も投手もやることで、バランスよく体が作られる」と子供たちにエール。指導者には「選手をとにかく褒める。野球は楽しい、と感じるように。楽しくないと、何事も続けられないから」と語った。
■母校・関大で後進育成「個々の長所伸ばす」 山口氏
山口氏は現役時代も含め約40年間過ごしたプロ野球界を離れ、平成28年「第3の野球人生」の場に母校でもある関西大学野球部を選んだ。「選手は育てるのではなく、育つ」を信条に、アドバイザリースタッフとして、後進の育成に力を注ぐ。
野球部には現在、投手だけで約60人が在籍。プロと違い、練習場所は限られる。全国で活躍した選手から、大きな大会での経験のない選手まで一人一人の力量もさまざま。「(全員に)同じ指導はできない」が、それが面白さでもあるという。