ヤマハがミナレリにもたらしたもの。日本とイタリア企業の体質の違いとは
ファンティックがミナレリを買収したと言っても、ミナレリとヤマハのビジネスパートナーとしての関係性は続いています。ミナレリは今も、ヨーロッパ向けの全てのヤマハの車両を開発しているということです。ヤマハは現在も、ミナレリに大きな影響を与えていると言います。 それでは、逆にヤマハという日本企業のネガティブ・ポイントは何でしょう。 イタリアの多くは中小企業で、その中小企業でさえ、全体の0.5パーセントほどだと言われています。大企業と呼ばれる規模の会社は0.1パーセントにも満たないのです。ミナレリもまた、従業員数192人の会社(2020年10月8日発行ヤマハのプレスリリースより)です。経済を支えているのが日本とは異なることがわかります。 そうした数字上だけではなく、今回のミナレリ、そしてファンティック本社の取材を通して、筆者(伊藤英里)には実感がありました。イタリアの会社は規模は大きくはないのですが(日本の大企業と比べて、という意味)、その分、会社同士の結びつきが強いのです。それがまさに、ファンティックとミナレリなのだろう、と。 そんな彼らの目には、ヤマハ、そしてヤマハを通して日本企業がどう映っていたのでしょうか。ベナッティさんはこの質問に対し、「日本の企業は、とてもよく構造化されているのです」と、プラス面から切り出しました。 「全てのプロセスはとても詳細であり、説明されており、そして継続的なチェックを適用します。ですから、もちろんこれはプラスです。なぜなら、生産ラインに多くの信頼性をもたらすことができるからです」 「例えば、生産ラインの最後に私たちが見られるデータがあります。最終的にどのくらいの失敗があるのかがわかるのです。その数はゼロに近いです。生産が信頼できるのです。生産ライン内で行なわれる各プロセスは、最終的に製品の欠陥が無いようにしています。これはとても良い点です」 では、マイナス面は? 「同時に、同じことが欠点にもなります。例えば、非常に堅い。柔軟性が無いのです。もし何かを変更したかったら、かなり時間がかかります。検討が重ねられ、評価され、例外の管理コストについてもかなり検討されます。ですから、何か問題が起きた場合、日本企業は管理するのが難しいですね。彼らは硬くて柔軟性に乏しいですから」