日本代表レベル向上も…「一番すごいのは誰?」 大津祐樹が考えるサッカー界の悩み【見解】
情報やデータは日本サッカーを強くするのか?
現在、株式会社ASSISTで代表取締役社長を務めている大津氏が注力している事業の1つに育成がある。サッカー選手を目指し、がむしゃらに公園でボールを蹴り込んでいた大津少年の時代とは異なり、現代は情報やデータを基に成長を促進させる環境がある。自分の特長や課題が可視化されることは、もちろんトレーニングの効率化につながる。一方で、異彩を放つキャラクターの持ち主が減っていく可能性を指摘している。 「当時は情報が全くと言っていいほどなかったので、何をやればいいのか、どこを目指せばいいのか、正解が分からない中でそれぞれが個性を磨いていた。今は情報収集が当たり前の時代になり、今の現役選手だけでなく、育成世代にとっても充実した環境が揃うようになった。何をどう取り組むべきなのか、正解がデータとして可視化されるようになったのは非常にポジティブである一方、異色な個性が出てきにくい環境にはなったと言えるかもしれない。でも、際立つ存在がいないことが全体のレベルが上がっている裏付けとも言えるわけで、こればっかりは5年後、10年後に日本サッカーがどの立ち位置にいるのか、そこで答え合わせをするしかない」 正解がデータとして与えられる英才教育が、勝負の世界で果たしてすべてにおいてプラスに働くのか。正解を自ら導き出すメンタリティを身につけてきた歴代の選手たちを凌ぐことはできるのか。大津氏は「僕がプロ1年目で入ったサッカー業界の感性と、引退する時の時期の感性とでは、全くの別物となっている。そういった意味では、今の日本代表は、時代の移り変わりの狭間にいる世代なのではないかと思う」と分析しつつ、「行き着く先はわからない。でも、だからこそ、今後どうなっていくのか、楽しみでしかない」と目を輝かせていた。 [PROFILE] 大津祐樹(おおつ・ゆうき)/1990年3月24日生まれ、茨城県出身。180センチ・73キロ。成立学園高―柏―ボルシアMG(ドイツ)―VVVフェンロ(オランダ)―柏―横浜FM―磐田。J1通算192試合13得点、J2通算60試合7得点。日本代表通算2試合0得点。フットサル仕込みのトリッキーな足技や華麗なプレーだけでなく、人間味あふれるキャラで愛されたアタッカー。2012年のロンドン五輪では初戦のスペイン戦で決勝ゴールを挙げるなど、チームのベスト4に大きく貢献した。23年シーズン限りで現役を引退し、大学生のキャリア支援・イベント開催・備品支援・社会人チームとの提携・留学などを行う株式会社「ASSIST」の代表取締役社長を務める。2024年から銀座の時計専門店株式会社コミットの取締役に就任。
城福達也 / Tatsuya Jofuku