60年以上経った今も読み継がれる名作『スイミー』…レオ・レオーニの絵本は、大人になってより深く心に染みる
■ “絵本作家レオーニ”誕生の秘密 展覧会ではレオーニの多彩な「仕事」と「アート」が紹介されている。イラスト、デザイン、絵画、彫刻……。アメリカ時代に手がけたビジネス雑誌『フォーチュン』やCBS放送、MoMA、オリヴェッティ社などの仕事からは、アメリカ屈指のアートディレクターとして一時代を築いたレオーニの姿が浮かび上がってくる。 そして、レオーニといえばやはり「絵本」。今も世界中にファンを増やし続けるレオーニ作品だが、若い頃から絵本の制作に取り組んでいたわけではない。意外にも、初めて絵本を作ったのは49歳のときだ。 ある日、5歳と2歳(前述のアニー・レオーニ氏)のふたりの孫を連れて電車に乗っていたレオーニは、退屈そうな孫たちを喜ばせようと、持っていたLIFE誌のページをちぎって、即興のストーリーを語り始めた。その物語は孫たちを魅了したばかりでなく、近くにいた大人の乗客の関心も集めたという。 電車内で生まれたこの物語が、デビュー作『あおくんときいろちゃん』。ある日、親からお留守番を頼まれたあおくんは、仲良しのきいろちゃんに会いたくなり、つい遊びに出かけてしまった。会うことができたふたりは、嬉しくて、嬉しくて、たまらない。そして、「あお」と「きいろ」が重なって「みどり」になってしまう。そんな不思議でいて、心があたたまるストーリーだ。登場人物の表情は見えないが、喜怒哀楽をはっきりと感じ取れる物語。1959年に刊行されると、『あおくんときいろちゃん』はたちまちベストセラーになった。 それからレオーニはほぼ1年に1冊のペースで絵本を作り続け、絵と文章の両方を手がけた作品は27冊にのぼる。展覧会では絵本原画の一部を展示。水彩、油彩、クレヨン、パステルなどで描かれた原画のほか、コラージュ技法によるものも多い。色や模様の付いた紙を、ハサミで切り抜いたり、手でちぎったりしながら、物語の世界を作り上げていった。 原画が飾られた展示室の中央には椅子と本棚が設えられ、本棚には絵本がずらりと並んでいる。レオーニの原画に囲まれて、絵本を読むという至福の体験。時間が経つことなど、すっかりと忘れてしまう。 「レオ・レオーニと仲間たち」 会期:開催中~2025年1月13日(月・祝) 会場:板橋区立美術館 開館時間:9:30~17:00 ※入場は閉館の30分前まで 休館日:月曜日(1月13日は開館)、12月29日~1月3日 お問い合わせ:03-3979-3252
川岸 徹