欧州全域にテロ拡散 「スペイン奪還」目論むISやアルカイダ
スペイン北東部のカタルーニャ州バルセロナとカンブリスで起きた連続テロ事件では15人が犠牲になりました。犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)との関わりが今後の焦点となりますが、実行グループの大半は若いモロッコ系の男でした。今回のテロについて、スペインの、しかもバルセロナで起きた意味は大きいと、元公安調査庁東北公安調査局長で日本大学危機管理学部教授の安部川元伸氏は指摘します。安部川氏に寄稿してもらいました。 【写真】モスル陥落も国外拠点で「カリフ国」再建目指すIS なお続くテロの脅威
◇ しばらく大規模なテロ事件が発生していなかったスペインでもとうとう過激派組織「イスラム国」(IS)が関係するとみられるテロが起きてしまいました。車両を人混みに突入させて通行人をひき殺すという凄惨なテロが発生するたびに、2008年6月に日本の秋葉原で起きたいわゆる「秋葉原通り魔事件」の惨劇を思い出さざるを得ません。 数年前からイスラエルで頻発している自動車テロの容疑者らも含め、テロリストは、我が国での上記事件を参考にしたのではないかと私は考えています。あの時の犯人は、レンタカーの2トントラックで歩行者5人を跳ね飛ばした後、トラックを降りて近くにいた通行人・警察官らをダガーナイフで次々に襲い、結局7人を死亡させ10人に重軽傷を負わせました。この事件の手口は、本年6月にロンドンで起きたテロと全く同じです。銃や爆弾などを調達することは、先進国では容易なことではありません。自動車という大量殺りくを可能にし、誰もが入手し得る強力な武器が身近なところにあったのです。
スペインに執着があるイスラム過激派
スペインという国では、歴史的にアルカイダなどのイスラム過激派組織が「テロ細胞」(現地の実行部隊など)を構築し、常にテロ実行の機会をうかがっていました。さらには、民族系の反政府組織「バスク祖国と自由」(ETA)がフランスとの国境地帯を拠点にして爆弾闘争などを行っていた時期もありました。しかし、ETAについては、2011年10月に無期限の停戦を表明し、その後、武装解除にも応じて最近ではほとんどテロ事件を起こしていませんでした。 他方、イスラム過激派にとっては、スペインには特別な思い入れがあり、イスラム過激派がおいそれとこの国から撤収するとは考えられません。すなわち、イベリア半島は、8世紀から11世紀にかけて、一部の山岳地帯を除いてウマイヤ朝などのイスラム帝国が支配し、イスラム文明が大いに栄えたことから、世界中でイスラム版図の拡大を企図するISやアルカイダは、かつての栄光を夢見て同地域の奪還を目論んでいるのです。