フランスのビーチはコート・ダジュールだけじゃない!「サン゠ナゼールの海小屋」で知る大西洋側のフランス暮らし
#313 Saint-Nazaireサン゠ナゼール(フランス)
フランスのビーチというと、ニースやサン・トロペといった、地中海に面したコート・ダジュールの華やいだイメージ。さて、今回ご紹介するサン゠ナゼールは大西洋側。一体どんなビーチが待っているのでしょう? 【画像】浜辺に展示されたアート「足、プルオーバー、消化器官」。どれが消化器官? そもそも今回のフランスへの旅は、現代アートの街ナントで毎年夏に2か月にわたって開催される芸術祭「ル・ヴォワイヤージュ・ア・ナント」が目的。この期間は街のあちこちにインスタレーションがちりばめられ、ヨーロッパの人々を中心に100万人ものツーリストがやってきます。 今年の「ル・ヴォワイヤージュ・ア・ナント」のテーマは“木”。ふだん気にとめることもないけれどそこにある、そんな当たり前の名脇役、樹木にフォーカスしています。グララン劇場前の巨大な根っこや、植物園の中にそびえる巨大な木の男など、作品を探しながらの街歩き。歩けば歩くほど自分が街になじんでいく、そんな感覚がまた楽しい!
船に乗ってサン゠ナゼールへ。船上でもアート鑑賞を
ナントからサン゠ナゼールへはロワール川から船に乗って目指しました。この川下りでも「エスチュエール・ナント-サン゠ナゼール」という芸術プログラムを開催。両岸に33点の屋外コレクションが常設されており、緩やかに流れる水辺の風景と共に、現代アートが次々と目を楽しませてくれます。 ナントから船に乗ること、約2時間。芸術プログラムも終盤に入り、オーク材の通信塔のオブジェを通り過ぎると、船はサン゠ナゼールの港に入っていきます。岸壁には工場群や石油コンビナートが立ち並び、巨大な貨物船が停泊する、大西洋に注ぎ込む河口の街に到着です。 サン゠ナゼールは20世紀半ばまで、海を隔てたアメリカとの航路によって、造船業や海運業で栄華を極めた港町。第二次世界大戦ではドイツ軍の潜水艦の要塞があったことから集中的に爆撃を受け、街の85%が壊滅してしまった過去も。それでもラ・アヴァンヌ地区の家並みには第一次大戦前の、華やかなりしベル・エポック時代の風情が残されています。 サン゠ナゼールにも巨大な屋外アートがあります。そのひとつが、“カニの爪”と呼ばれる海に延びた桟橋の間に設置されたコンクリートの作品。高さおよそ7メートルもの足とプルオーバー、そして消化器官のオブジェが、干潮時に干上がった浜辺に点在していました。風や波によって浸食されていくのも、アートなのだとか。