気がついたら葉山で16年ーー長澤まさみとも共演、農業に勤しむ謎の米俳優
あっという間に売り切れる、「マイケル 農園」の野菜たち
俳優業の傍ら、農業にも精を出している。 この日訪ねたのは、葉山でマイケルが耕す、約2000坪の畑。眺望も素晴らしい山の上だが、どのようにして土地を見つけたのだろう。 「ご縁ですよね、近所の農家さんのご好意です。もともとは、ぼうぼうに草木が生い茂ってて、人も入れないみたいな山でした。そこを全部僕が開墾して、一から土づくりをして。四季を通じて200種類くらいの野菜と果物を育ててます。完全に無農薬。だいぶいいバランスの畑になってきました。苦労した分、栄養が多いからね。最近また300坪借り増しました」 マイケル農園の野菜・果物は、虫食いもあるが、味がいいと評判だ。地元のマーケットなどで不定期に販売すると、あっという間に売り切れてしまう。 「最近は天候が昔とだいぶ変わってきちゃった。雨の降り方が激しくて、土が流れやすくなってるんです」 畑のアトリエのような作業小屋で、コーヒーを入れてくれるマイケル。 最近は豆の焙煎をするのが楽しいという。一昨年の台風で傾いてしまったこの小屋を、一人でジャッキアップしたというから驚く。柱を立てるのも、自分一人でやったんだよ、と笑った。 父親と大工仕事をしたり、庭で野菜を育てて料理をしたりすることが大好きな少年だった。DIY精神は、そんな子ども時代に自然と身についたものだ。 「たとえばテーブルが欲しいと思ったら、まず、どうやってつくろうか。どこで買おう、とは考えない。両親がそういう人だったからね。母親には、裁縫を教えてもらった。10代の頃は、洋服づくりに夢中になって、オリジナルブランドを立ち上げたりもしました」
これからもずっと、日本に住むと決めています
今年はいくつか大きな仕事も決まり、俳優としてステップアップをしようとしているマイケル。さらに売れっ子になったら、今の葉山のスローライフを手放すことになるのではないだろうか。 「この暮らしを変えるつもりはないです。いくら俳優業が良くなっても、自分と家族のバランスが取れていないと、続けられないと思う。山に上がって畑仕事をして、海でサーフィンをして、仕事があれば出かけていく。お金持ちになることが、僕の目標ではないし。今のこのバランスが、僕にとっては最高の幸せ」 映画やドラマの撮影で、長期間家を離れることになったら、畑はダメになってしまうように思える。 「僕の畑は自然農法だから、水もほとんどあげないし、植えたら後はよろしくね、っていう。数カ月畑に行けないくらい俳優業が忙しくなったら、アルバイトのお給料を払えるくらいになるかな?(笑) しばらく人がいないってわかると、『お、あいつ来てないな』ってカラスがバンバン来て食べちゃうからね」 芸能の仕事は不安定だ。今年売れても、来年サッパリ……は、ザラ。また、一昨年来のコロナ禍にも振り回されたように、何が起こるかわからない。 「だからね、畑はやめられない。放ってもおけるけど、手をかけようと思えば、いくらでもやることがあるから。俳優の仕事がなくても、畑に行って一日作業したら、ビールがおいしく飲める。そういう気持ちが、自分を支えているんです。僕はとにかく、じっとしていることが苦手。いつでも、何かに夢中になっていたい」