「クリスマスっぽい」 クリスマス広告 はもはや時代遅れ? デジタルがクリスマスをどう変えたのか
クリスマスはモーメントからビルドアップへ
おそらく、もっとも重要な点は、クリスマス広告の公開が「モーメント(瞬間)」的なイベントから、「ビルドアップ(積み上げ)」型の施策へとシフトしていることだろう。心待ちにすることは、ただ漫然と待つことではない。それはデジタルでの接触が早期に始まることを意味する。マーケターたちはこのシフトを敏感に感じ取り、消費者の関心を長期的に持続させるような形で物語を展開する工夫をこらしはじめた。たとえばジョンルイスの場合、「スナッパー」というキャラクターに生気と現実味を与えるため、ハエトリソウという植物に関する重要かつ興味深い情報をインスタグラムで拡散させることにした。一方、ウェイトローズはメインのテレビ広告を削り、選りすぐりの主力製品をインスタグラムで紹介し、店頭に並ぶ時期を告知している。 リース(Wreaths)の創設者であるトム・イエイツ氏は、「広告のクリップ映像を複数のソーシャルプラットフォームで小出しにしながら話題を積み上げ、同時に、キャンペーンの開始前から実際の商品を店舗に並べはじめる」と説明する。 もちろん、こうした「小出し」戦略の結果はふたつにひとつだ。まずは、広告全編の公開に向けて、期待感や興奮が徐々に高まるケース。ほとんどのブランドはこちらに当てはまる。逆に、なかには裏目に出るケースもあり、たとえばマークス&スペンサーが今年制作したライフスタイル系のクリスマス広告はその一例となった。この広告のワンシーンをSNSに投稿したところ、炎を背景とした緑と赤(パレスチナ旗に使われている色)がガザの現状を彷彿させて不快だと、厳しい批判が殺到した。SNSのリアルタイムの反応を見れば、このキャンペーンが本格的な離陸前に中止となったのもやむを得ないだろう。 しかも、このようなキャンペーンの開始時期はかつてないほど早まっている。ハロウィーンが終わるやいなや、クリスマス広告が始まるといった感がある。実際、11月1日の朝を迎えると、カボチャの話はまったく聞かなくなった。代わりに、ライフスタイルブランドのヴェリー(Very)やスイスチョコレートのリンツ(Lindt)らは、年末の広告商戦を勝ち抜くために、早くもクリスマスCMを解禁していた。