「シムシティ」が政治塾を開催、エデュテイメントは政治を身近にできるか?
「“若い人の政治離れ”が社会課題として挙がっているが、実はシムシティの中で市長=政治家として街づくりという政治に触れているということにプレイヤー自身も気づいていないのではないか。若い人と政治の接点がゲームの中にあるというのが、シムシティの持つ面白さ。ゲームで得た街づくりの知見はリアルな政治にも通じる部分がある。この政治塾を通じて、ゲームの世界とリアルな世界が繋がれば」(藤村さん)。 藤村さんが話すように、ゲームの中で実践した公共政策が市民の高い満足度につながったのならば、それはリアルにおける公共政策のあり方にも通じる部分があるということになります。ゲームを“攻略”するために蓄積した知見が、リアルな社会のあり方を考える上でも役に立つということを実体験してもらうという点が、今回の政治塾の狙いだということができるでしょう。 「シムシティのプレイヤーにとってはゲームを通じて街づくりが身近なものになっており、東国原英夫氏を始めとする専門家の講演内容にも親しみを持って聞くことで街づくりへの理解がより深まるのではないか。プレイヤーにとっては、ゲームの中で市長として実践している政治の“答え合わせ”ができるはずだ」(藤村さん)。
ゲームというバーチャル空間で学び、リアルな世の中を見る
“ゲームを通じて学ぶ”というエデュテイメントの考え方は、最近では主に子供向けプログラミング教育の領域で積極的に取り入れられており、例えば世界的に人気のゲーム「マインクラフト」が学校教育の現場で教材として採用されたり、玩具メーカーのレゴ社が開発したプログラミング教育用のプログラムが教育研究の場で活用されていたりなど、エデュテイメントをコンセプトにしたデジタルコンテンツの利活用が拡大しています。 しかしながら、シムシティの政治塾の狙いを聞いて感じるのは、“世の中を知る”という広い意味での学びにとっても、ゲームによるエデュテイメントの体験が大きな役割を果たすのではないかということです。もちろん、ゲームの中でユーザーが接するのはあくまでバーチャルな世界ですが、そのバーチャルな世界の中でリアルにも繋がるエッセンスを学ぶことができれば、世の中の見え方が少しだけ変わるのではないでしょうか。 シムシティにおいても、バーチャルだからこそ許される“トライアンドエラー”を繰り返しながら政治や街づくりのエッセンスについて学ぶことで、自分の暮らす地域の課題が見えるようになったり、社会の将来に対して自分なりの考え方を持つことができるようになるのかもしれません。 最近では、コンピューターグラフィックの高精細化やVR技術の発展により、私たちが体験できるバーチャルの世界はよりリアルに忠実なものへと進化を遂げています。こうしたバーチャルの発展が、これから私たちにどのような学びの機会を提供してくれるのでしょうか。私たちが暮らすリアルな社会や日常生活をより良くするためのバーチャルの利活用が、今後さらに拡大していくことに期待したいところです。 (執筆:井口裕右/オフィスライトフォーワン)