「うちの子が急にもだえ苦しみ出して、泡を吹いて死んでしまった」飼い主が切望する愛猫の死の真相
例えば、ネコが外に出て病原体を保有している野良ネコと交尾やけんかをすれば、猫免疫不全ウイルス感染症や猫白血病ウイルス感染症といった、さまざまな感染症の病原体に感染する危険があります。 ネコがネズミやカラスなどの野生動物を捕食したり、蚊やダニなどの病原体を媒介する動物と接触したりすれば、それらが持っている病原体にも感染する可能性があります。 そして、この中のいくつかの病原体は、ネコだけでなく人間にも感染するのです。
「ネコは外を自由に出歩けたほうが幸せだろう」という考えは、ネコへの愛情からくるものでしょう。ただ、獣医療に従事している者としては、「外を自由に出歩けるネコは、完全に室内で飼育されているネコよりも不幸になる可能性が高いのですよ」と言わざるをえません。 愛情だけで動物は飼えません。ネコを大事に飼いたいのであれば、飼い主さんにはこのような知識をしっかりと持っていただきたいと思います。 ぼくたち人間も、できることならなるべくけがをせず、病気にならないように過ごしたいですよね。ネコにも健康で長生きしてもらいたいなら、安全な家の中で飼うのが一番良いでしょう。
後編(愛猫を失った男性の「ネコは外が幸せ」という誤解)は、こちらからお読みいただけます。
中村 進一 :獣医師、獣医病理学専門家/大谷 智通 :サイエンスライター 書籍編集者