「うちの子が急にもだえ苦しみ出して、泡を吹いて死んでしまった」飼い主が切望する愛猫の死の真相
おまけに自由に出歩くことができる外飼いのネコの場合、外でどのような毒物にさらされたのか飼い主が見ていないので、判断がとても難しいのです。 ■摂取した毒物は農薬か除草剤? 獣医病理医として、死亡した動物の胃の内容物や、毒物が含まれている可能性のある肝臓、腎臓、筋肉、血液などのサンプリングはします。しかし、その段階で原因が明らかにならなければ、そこが現状、病理検査の限界であることは多いのです。 ただ、このネコが飼われていたのは周囲に田んぼが多い地域であり、日常的に家の外を出歩いていたとのことですから、ぼくの経験上、原因となった毒物は農薬か除草剤、あるいは何らかの有毒植物ではないかと推測できました。
農薬はともかく、近年製造されている除草剤は生体への害は少ないのですが、農業の現場では、数十年前から農家さんが所持されていた毒性の強い除草剤や殺虫剤がいまだに廃棄されずに保管されていることがあります。 茶トラのネコがこれらの物質で中毒を起こし、急死した可能性は十分に考えられます。 ネコの誤飲や中毒といった事故は、思いもよらぬタイミングで起きます。農薬のような明確な毒物にかぎらず、ぼくたちの身の回りに普通にあるタマネギ、アボカド、ユリ、チョコレート、コーヒー、タバコなども、ネコにとっては危険な毒となります。
家の中で起きた場合は何を口にしたかの推測ができ、まだ対処のしようもあるでしょう。しかし、外に出ているネコの場合は、何に触れ、何を口にしたかがまずわかりません。 胃に物が残っているならまだしも、口にしたのが液体であれば特定は困難を極めます。中毒症状が出るまでの時間も、毒物によってまちまち。原因物質が特定できなければ、有効な治療も難しくなります。 ■病原体を家に持ち込むことも この茶トラのネコのケースでは死因の可能性から除外しましたが、外飼いされているネコが感染症を起こし、重篤化してしばしば死に至ることもあります。