「1000万円で十分。金には振り回されない」。奥田民生の“自然体”な生き方
「ひとりでBARは大人の証!」行きつけの店がもたらす心の余裕
ーー本によると、大人になると、お酒の飲み方やバーでの過ごし方に変化があるということですが……。
最初はBARって緊張するよね。でも、一度慣れちゃえば、あの重たい扉を開けるのも全然大したことない。ひとりでカウンターに座ると、「ああ、大人になったな」ってちょっと感じるんだよ。 本にも書いてあるけど、大人になったら、ひとつぐらい「行きつけの店」を持っておくと、もっと人生が楽しくなると思う。新しい店に行くのは最初ビビるけど、行き慣れた店なら自然体でいられるし、常連さんとも顔なじみになる。その店で知り合う人たちは、仕事や家庭とは別の、自分だけの空間でつながるコミュニティみたいなもの。そこがいい息抜きになるんだ。 BARに来る客は、意外と気軽に話せる人が多いし、仕事とは関係ない人ばっかりだから、肩の力を抜いて話せる。そんな場所がひとつでもあると、自分の居場所が増えた感じがして、楽しくなるんだよね。 特に男は、新しい店に入るのってちょっと勇気いるけど、ひとつでも「行きつけ」ができれば、ふらっと気楽に寄れる安心感があって、すごくいいもんだよ。
「高揚感なんてあんまりない」奥田⺠生が語る“ぼんやりとした達成感”
ーー今日のインタビューを通して、最後にぜひお聞きしたいのですが、「人生で一番高揚感を感じる瞬間」というのは、どんな時ですか?
いや、正直言ってあんまりないんだよね(笑)。俺、目標とか持ってないから、「達成しました!」っていう瞬間がないんだよ。なんとなくクリアしたかなって思う時はあるけど、それも「これだ!」っていうのじゃなくて、全部がぼんやりしてる感じ。 だから、最高に盛り上がる瞬間って言ったら、「ラーメンがめちゃくちゃ美味い!」とか、そういう小さなことなんだよね。 生きてる喜びって、そういうちっちゃいことだと思う。目標を立てて、それに向かって頑張るのは分かりやすいんだろうけど、俺の性格的にはそういうのが合わないんだよね(笑)。 ーーその答えは初めて聞きました(笑)。 そうだろうね(笑)。カーリングシトーンズのメンバーからも、「お前は風情がない」「情緒がない」ってよく言われるんだよ。「夕焼け見て何も感じないのか?」って聞かれるけど、「いや、感じるわ!」って(笑)。でも、そう見えてるんだろうね。 ーーありがとうございました。とても興味深い話を聞けました。 こちらこそ。面白いと思ってくれたならよかったよ(笑)。 奥田⺠生●1965年、広島生まれ。1987年にロックバンド「UNICORN」のボーカリストとしてデビューし、「すばらしい日々」などのヒット曲で音楽シーンに大きな影響を与える。1994 年、シングル「愛のために」でソロ活動をスタートさせ、「イージュー★ライダー」「さすらい」などの代表曲を生み出し、幅広い層の支持を集める。音楽プロデューサーとしても才能を発揮し、PUFFYのプロデュースなどで成功を収める。また、井上陽水とのコラボレーションなど、様々なアーティストとの共演も高く評価されている。自身の音楽レーベル「ラーメンカレーミュージックレコード」を立ち上げ、音楽活動の幅を広げる。独自の活動スタイルとして、バンド形式の「MTR&Y」や弾き語りの「ひとり股旅」、移動式レコーディング企画「トツゲキ! オートモビレ」など、多様なアプローチを展開。リスナーや他のミュージシャンからも愛される存在となっている。2024年10月21日、ソロ活動本格始動から30周年を迎えた。 ⻑田 慶=写真 池田鉄平=取材・文
OCEANS編集部