種子法廃止は権利の保護か、公共性の排除か? 世界の動きと日本の立ち位置
きょう2018年4月1日廃止となった「種子法(主要農作物種子法)」。これまで公的機関が担ってきた米、麦、大豆といった農作物の種子供給に民間の参入を促すため、国は“壁”を取り払うのだとします。最終回では、まさに国境という壁を越えてタネを売る多国籍企業などの動きから日本のスタンスを位置付け、私たちは何をすべきなのか、何ができるのかを考えてみましょう。
中南米の「種子」映画を東京で上映
3月25日、東京都内でドキュメンタリー映画『種子―みんなのもの?それとも企業の所有物?』日本語版の完成記念上映会が開かれました。 映画は中南米8カ国のNGOや農民組織8団体が共同製作し、2017年6月にスペイン語版が完成。日本でちょうど種子法廃止決定の波紋が広がっていたころで、オリジナル版を観たNPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)共同代表の内田聖子さんが「日本でもタネの問題を考えるきっかけになる」と日本語版の製作を決意。クラウドファンディングで資金調達を呼び掛けたところ、約20日間で目標金額の100万円が集まり、最終的に290万円を超えました。 25日の上映会はその支援者を中心に、約160人が参加。感慨ひとしおといった雰囲気の中で、上映が始まりました。 映画の主役は中南米の先住民族や少数民族。今の私たちが食べるトウモロコシの原種とされる「テオシント」など、伝統的な作物のタネを引き継いで農業を営んできた人たちです。 ところが近年、各国で農作物の「育成者権」を保護する動きが強まります。今まで農民が使ってきたタネが急に「多国籍企業のもの」になり、それを保存したり、市場で交換したりすることを「犯罪」として取り締まる条約や法律がつくられるというのです。 映画では、そうした動きに戸惑う農民たちの声や、議会で法案が通った後に違憲判決を勝ち取ったグアテマラの反対運動などを取り上げています。そして、農民たちの手でタネを守る新しい運動やネットワークの広がりを伝える一方、同じような規制がアフリカなど他地域でも進められる恐れを訴えていきます。