日本人の大腸がん死亡率は世界トップ…研究で判明した大腸がんリスクを「上げる食材」と「下げる食材」
■早期に見つければ、死亡率を下げられる ただ、大腸がんの場合は、がんの発生から深刻な状況になるまでに通常5~10年ほどかかるため、ある程度進行しても命が助かることは多いのです。 便潜血検査でも死亡率を約6割も減らせるという報告もあります。何より「さぁみんなで内視鏡検査をしましょう!」といえるほど大量の検査を行う施設がありません。ですから、まずは年に1度の便潜血検査でファーストスクリーニングをしていこうというのが日本の現状です。 大腸がんの発症が若年化してきていることもあり、国は40歳以上の人に年1回の受診を推奨しています。大腸がんには遺伝性のものもあるので、一親等以内の家族に大腸がんの発症歴がある場合には、必ず40歳から検診を始めるようお勧めします。 ■大腸がんリスクを高めるものは何なのか 一方、米国では年々大腸がん死亡率が減少傾向にあります。その大きな理由の1つは、保険制度の改正に伴い、内視鏡を含む大腸のスクリーニング検査が受けやすくなったことがあります。また、米国では地道に取り組んできた大腸がん予防策が30年もの時間をかけて効果として表れているというのもわかってきました。 日本も、40歳から便潜血検査、50歳からは5年に1回内視鏡検査を受けるといった形にするほうがいいのかもしれません。 本書の便秘に関する項目で、便秘が大腸がんのリスクになるという明確なデータはないと紹介しました。では、なにが大腸がんのリスクとなるのでしょう。 ヒトを対象とした研究では、これまでに食べ物と腸内細菌が大腸がんのリスク因子になることがほぼ明らかになっています。
■加工肉は「発がん性がある」と分類されている 2007年に出された世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)による疫学研究の報告書によると、レッドミートと呼ばれる牛や豚、羊などのいわゆる“4本足の肉”や、ソーセージやベーコン、サラミなどの加工肉の摂取は大腸がんのリスクを上げることが「確実」と判定されており、赤肉は調理後の重量で週500g以内、加工肉はできるだけ控えるようにと勧告されています。 IARC(国際がん研究機関)では、加工肉を「ヒトに対して発がん性がある」、レッドミートを「ヒトに対しておそらく発がん性がある」と分類し、毎日50gの加工肉摂取が大腸がんのリスクを18%増やすと発表しています。 そして、飲酒は確実に、肥満はほぼ確実に大腸がん発症のリスクを上げると評価されています。ほかにも欧米の疫学研究によると、人工甘味料を用いたダイエット飲料の摂取が多いことがリスクになると出ています。 ■腸内の硫化水素によってがん細胞が増える? こういった食品がリスクになるのは、加工肉やダイエット飲料に含まれる成分が腸内細菌に影響を与えて、腸内で硫化水素が増えるからではないかと考えられています。大腸発がんと硫化水素に関しては重要な点がいくつか明らかになっていて、硫化水素の濃度が高いほどがん細胞が増殖しやすいようです。 腸内の硫化水素には腸の上皮細胞がつくり出す内因性のものと、腸内細菌がつくり出す外因性のものがあり、化学的には同一の物質です。大腸がん細胞では硫化水素を合成するいくつかの遺伝子の発現が亢進し、自ら腸内の硫化水素を増やしているなど、がん増殖における硫化水素ならびにその関連活性種のシグナル伝達への役割については、今まさに多くの研究が進められています。 一方、外因性の硫化水素は、腸内細菌の中でも硫酸塩やタウリンを基に硫酸還元菌が生成することが知られています。タウリンは、肝臓から分泌されるタウリン抱合型胆汁酸から遊離するタウリンの比率が多いとされています。