宮藤官九郎×大泉洋による特別ドラマの評価は? なぜクドカンのリブート作品が相次ぐのか? 『終りに見た街』考察レビュー
テレビ朝日開局65周年記念ドラマプレミアム『終りに見た街』(テレビ朝日系)が放送された。本作は、山田太一の名作を脚本・宮藤官九郎×主演・大泉洋のタッグで約20年ぶりのドラマ化。今回は、”クドカン”のオリジナル要素が多く組み込まれた本作のレビューをお届けする。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】衝撃のラスト…『終りに見た街』貴重な未公開劇中写真はこちら
もし令和の時代から昭和19年の戦時下タイムスリップしたらどうなる…?
もしも東京郊外で暮らす平凡な家族が、戦時下の日本にタイムスリップしたら? 戦争体験者の一人である山田太一がそんな空想を膨らませ、突如戦争という異常な状況に放り込まれた人間心理を鮮烈に描き出した珠玉の名作『終りに見た街』。原作者本人の脚本で二度テレビドラマ化された本作を、“クドカン”こと宮藤官九郎が令和の世に蘇らせた。 本作の主人公は、テレビ脚本家の田宮太一(大泉洋)。代表作はないが、細々と続けて20年が経つ。プライベートでは、東京郊外の住宅地に一軒家を構え、家族に疎まれながらも妻のひかり(吉田羊)、女子高生の娘・信子(當真あみ)、小学生の息子・稔(今泉雄土哉)、自身の母・清子(三田佳子)の5人で平穏な日常を送っていた。しかしある朝、目覚めると外の世界が一変。家の周りの住宅地は消え、深い森に変貌していた。 混乱しながらも状況を整理した結果、太一たちは太平洋戦争真っただ中の昭和19年6月にタイムスリップしてしまったことが判明。そして、同じくタイムスリップした太一の亡き父の戦友の甥・敏夫(堤真一)とその息子・新也(奥智哉)と合流した一家は共に戦時下を生き抜こうと奮闘する。 1982年(昭和57年)、2005年(平成17年)、2024年(令和6年)と時代設定を変えながら、受け継がれてきたこの物語。今回のドラマは原作とストーリーの流れはほぼ同じだが、いくつかの変更点がある。 一番大きな違いで言えば、原作にはいない太一の母・清子を登場させている点だろう。清子は認知症を患っているが、タイムスリップしたことで昔の記憶が鮮明に蘇る。 さらに太一がタイムスリップ直前に終戦記念スペシャルドラマの脚本を任され、プロデューサーの寺本(勝地涼)から送られてきた当時の資料を読み込んでいた…というのもオリジナルの設定。それらは、令和を生きる戦争を知らない太一たちにとって戦時下を生き抜くためのよすがとなっていくのだ。