「健常者とも互角に対戦」目が不自由でも楽しめるチェスや囲碁 アジアパラ大会の競技に…でも日本では選択肢乏しく盲学校ではオセロばかり
筑波大の佐島毅准教授(視覚障害教育学)は「ボードゲームは周囲とのコミュニケーションを育む遊びの一つで、その機会が初めから与えられていないのは大きな問題だ。友だちや地域の健常者らと交流する貴重な機会が失われている」と指摘する。 視覚障害者向けのオセロ風ゲームは2千~3千円程度で入手しやすいこともあり、「盲学校ではオセロばかりが遊ばれてきた」という。 ▽囲碁は低価格化に成功、「障害を感じずに健常者と対戦」 近年、低価格化に成功し、今後の普及に期待がかかるのが囲碁だ。視覚障害があっても楽しめる囲碁は、従来1セット約1万3千円で販売されていた。名称はアイゴ。「目(アイ)が見えなくても前に進め(ゴー)」との思いが込められている。碁盤の線が立体的に作られ、チェスと同様に碁石を差し込んで固定でき、突起の有無で碁石の色を判別できる。 以前は金型を使って碁盤を製作していたが、2019年にレーザーカッターを導入して「アイゴツー」を開発。製作が容易となり、価格は5分の1ほどの2700円で販売できるようになった。障害者の就労をサポートする「就労継続支援事業所」で働いている障害者が製作に携わっているのも特徴だ。
日本視覚障害者囲碁協会(東京)の代表理事で、自身も全盲の柿島光晴さん(46)は「少し練習をすれば、視覚情報がなくても盤面を把握できるようになる。障害を感じずに健常者らと対戦できるのが魅力だ」と話す。オセロ風ゲームのように今後、盲学校などで広く普及されることに期待を寄せる。 ▽人生ゲームやトランプ、ウノも 草の根で進むバリアフリー 一方、販売されているボードゲームやカードゲームを手作業で加工するなど、草の根ではバリアフリーが少しずつ進む。 視覚障害がある人に向けた雑貨などの販売も手がけている日本点字図書館(東京)は「人生ゲーム」を加工。マスの枠を木工用の接着剤で囲って凹凸を付け、各マスに書かれた「お題」は録音を再生して遊べるようにした。 そのほか、トランプやウノには点字を施し、図柄や数字を区別できるようにして販売している。 さらに民間企業でもユニバーサルデザインの製品開発の動きが出てきた。玩具メーカー「メガハウス」(東京)は、指先に触れる凹凸の形で色を識別できる「ルービックキューブ」を開発し、2021年の日本おもちゃ大賞を受賞した。