18日に再び「特捜検事」の尋問へ 真実を話すよう迫った検事ら 自ら立った法廷では「記憶にない」「差し控える」 初めて公開「取り調べ映像」の波紋 プレサンス山岸さん国賠訴訟
■法廷の温度が上がったような場面 「上級庁に報告は?」「答えてください」「差し控えます」
また国側代理人の反応が変わり、法廷の温度が一瞬にして上がったように感じられた場面もあった。 【中村和洋弁護士】「山岸さんの起訴の決裁は上司にとったんですよね」 【蜂須賀検事】「特捜部の副部長、部長。地検の次席と検事正の決裁はとっている」 【中村和洋弁護士】「高検、最高検にはとっていないんですか」 【蜂須賀検事】「(高検)検事長の決裁はとりました」 【中村和洋弁護士】「Y氏の供述の揺らぎについては伝えたんですか?」 【蜂須賀検事】「捜査で必要な書類は共有して…判断過程については…」 【中村和洋弁護士】「上級庁に報告はしたんですか?」 【蜂須賀検事】「必要な証拠関係を精査し、適切な…」 【国側指定代理人】「異議があります!!職務上の秘密にあたるため…」 【中村和洋弁護士】「職務上の秘密にあたるかどうかは本人が判断することです!教唆しています!」「異議には理由がない!答えてください!!」 【裁判長】「答えてください」 【中村和洋弁護士】「報告していないんですか?」 【蜂須賀検事】「差し控えます」 肝心な部分になると連発される「記憶にない」「答えを差し控える」という返答。結局この日の尋問でも、なぜ大阪地検特捜部は山岸さん逮捕に踏み切ったのか、その核心部分について明らかにされることはなかった。
■試されている検察組織の姿勢
大阪地検特捜部は以前にも大きな過ちを犯している。いわゆる「村木事件」だ。 2009年、自称障害者団体に偽の証明書を発行したとして、厚生労働省局長だった村木厚子さん(当時53)を逮捕・起訴したものの、裁判で村木さんの関与を証言していた関係者が次々と供述を翻し、強引な取調べの実態も明らかになった。結局、裁判所は村木さんに無罪判決を言い渡した。その後、証拠の改ざんまで発覚することになる。 関係者の供述を強引に引き出し、逮捕起訴につなげるという特捜部の捜査パターンが大きな非難を受け、様々な検察改革が行われた。特捜部が行う独自事件に関しては、すべて取り調べが録音録画されるようにもなった。 しかし、10年以上たって再び同じ過ちは繰り返された。なぜ録音録画されていることが分かりながら、大声で怒鳴り、机をたたく取り調べが今も行われているのか。なぜ客観証拠よりも自分たちの見立てに合う自白を重要視し、逮捕・起訴に至るのか。検察は突き付けられた問題に、正面から向き合うことを避けているように見える。 村木事件を経て、検察は自らの役割と使命を示した「検察の理念」を制定した。その中に、このような一説がある。 ・被疑者・被告人等の主張に耳を傾け、積極・消極を問わず十分な証拠の収集・把握に努め、冷静かつ多角的にその評価を行う 18日、蜂須賀検事は最後の尋問に臨む。 (関西テレビ記者 赤穂雄大)