12歳の宇野昌磨が語った「練習漬けの毎日」への思い
フィギュアスケート選手の宇野昌磨を小学生時代から取材し続けてきたジャーナリストが、10年間にわたる歩みを描いた『宇野昌磨の軌跡 泣き虫だった小学生が世界屈指の表現者になるまで』から、12歳当時の彼が日々の練習、そしてコーチについて語った箇所を抜粋でお届けしよう。 【画像】12歳の宇野昌磨が語った「練習漬けの毎日」への思い 「今の一日のスケジュールは……学校のある日はいつも4時間目くらいで早退してリンクに来て、練習。時間のある日は、最初の練習の後にちょっと休憩します。そのあと室内トレーニングをして、またリンクに戻って氷の上の練習、という感じです。 でも学校からリンクに来るのが遅くなった日は、氷上の練習の後に休憩なしで室内トレーニングをして、トレーニングが終わったら、そのままもう一回、氷の上! 陸上のトレーニングは室内が多いけれど、日によっては外でフリスビーをしたりします。 メニューはトレーニング専門の先生にいろいろお任せしていて、スケートのために違うスポーツもやっておいたほうがいいってことも言われました。 だからリンクでスケートを滑るだけでなく、今はみんな、いろいろなスポーツもするんですよ。少し前まで、バレエやダンスもしていました。今の僕はめっちゃ硬いけれど、ダンスをやっていたころは、身体もすごく柔らかかったんです。 そんなふうに、練習ばかりの毎日。でも、フィギュアスケートを選んで嫌になっちゃったことは、一度もありません。 スケートは楽しいし、学校の友達と遊べなかったりするけれど、もう全然気にしてない。もちろん練習は楽しいだけじゃないけれど、朝早くや夜遅い時間の練習も、小さいころからいつもしているので、当たり前のことです。 練習で泣いたりは……やっぱりまだ、しちゃいます(笑)。何度やってもジャンプが跳べないと、悔しくて泣いてしまう。跳べないジャンプを跳べた時や、調子がいい時はうれしくて、『ずっと練習してたい!』って思うんです。 でも、調子が全然上がらないと、僕はムキになって練習してしまう。それでも全然跳べなくて、まわりの人には『ムキになってやるな!』って言われて……。 そんな時は泣いてしまうし、スケートも楽しくありません。やっぱり練習は、苦しいことも多いかな。 でも苦しくてもがんばって試合に出て、試合でいい演技ができて、いい成績も残せたら……ごほうびにエキシビションにも出られるし、楽しいこともいっぱい待ってるから!」 スケートを選んで、嫌になったことは、一度もない。その言葉を、12歳の昌磨は驚くほど強い調子で言った。 彼と話をしていていつも思うのは、時に言いよどみつつ、恥じらいつつ、決して話し上手ではないけれど、その言葉に嘘やごまかしはひとつもない、ということだ。 後々、彼が大人の選手になったころ、「インタビューでは必ず本当のことを話します」と、その理由を明快に語ってくれるのだが、小さなころからその姿勢は変わらなかった。 だから、言葉の数は多くないけれど、そのひとつひとつが重く響く。フィギュアスケートを選んで嫌になっちゃったことは、一度もありません──。