現金決済、いまだに6割…紙幣流通量の半分60兆円は「タンス預金」とも
日本銀行は3月、17年ぶりの利上げに踏み切った。マイナス金利政策を解除し、「金利のある世界」が戻りつつある。政府は1月に新NISA(少額投資非課税制度)を始め、国民に資産形成を促した。令和の新紙幣をきっかけに、塩漬け状態のマネーが息を吹き返すかどうかは、日本経済にも影響を及ぼす。
偽造防止技術の見本市
紙幣の歴史は、偽札との闘いの歴史でもある。1961~63年には計343枚の偽千円札が出回る「チ―37号事件」が起きた。印刷が精巧で、本物とは手触りがやや違う程度だった。戦後最大の偽札事件を受け、肖像を聖徳太子から伊藤博文に替えた新千円札が誕生した。
肖像の最終候補には渋沢栄一も残っていたが、ヒゲの有無が命運を分けた。豊かなヒゲを持つ伊藤の方が、偽造防止に役立つ複雑な表現ができると判断された。
今回の新紙幣は、傾けると肖像が立体的に動いて見える世界初の3Dホログラムを導入した。渋沢の肖像には今回もヒゲがないが、60年前をはるかに超えた最新技術が安全性を支える。
紙幣に詳しいリコー経済社会研究所の芳賀裕理研究員は、「日本の紙幣は、偽造防止技術の見本市と言えるほど多彩な対策が採られている。その技術は世界トップクラスだ」と語る。