石川県の大地震でシロウトが支援すべきではない理由を、ビジネス視点で説明してみた。(中嶋よしふみ ウェブメディア編集長)
■役に立たないボランティアはゼロではなくマイナス。
2016年の熊本地震ではマスコミによる二つの事件が大炎上した。しかもそれは災害に直接関わる話ではない。 一つは被災地へ取材に訪れたテレビ局の取材班がガソリンスタンドの行列に割り込んだこと、もう一つは食糧が不足している被災地で弁当を調達し、それをツイッターでつぶやいたアナウンサーが批判されたことだ。 筆者はこのトラブルを、アナウンサーやスタッフの個人的な問題ではなく、準備不足で災害報道に臨んだテレビ局のガバナンスとコンプライアンスの問題であると指摘した。 ボランティアの受け入れをまだしていないと石川県が明言している以上、勝手に被災地へ行く「野良ボランティア」は全て自己責任で行動する必要がある。しかしインフラすらまだ完全復旧してない地域がある事を考えると、自衛隊のように自らの食事まで自力で完結するだけの支援能力がなければ到底役には立たない。自衛隊と比べれば全てのボランティアは「準備不足」だ。 そして役に立たないだけではとどまらず、大炎上したテレビ局のように現地で迷惑行為を行ったり、最悪の場合は被災してしまう可能性すらある。無秩序なボランティアは本来被災者に使われるべき希少なリソース(食料、ガソリン、救助のマンパワー等)を消費する。 機会費用の考え方で無秩序な支援物資は迷惑行為と指摘したように、無秩序なボランティアもまた深刻な迷惑行為であり、被災地で役に立たないことは「ゼロ」ではなく「マイナス=迷惑」であることを改めて認識すべきだ。 「援助物資は被災地を襲う第二の災害」とあるように、現在石川県に殺到する一般車両については「あなたも災害だ」と指摘しておく。しかもわざわざ総理や知事が警告するのだから、極めて深刻な災害である。 実際に物資を届けて喜んで貰えたという反論には(そのような報道もすでにある)、あなたが石川県に行かなければもっと大規模な援助がもっと早く届いていた、その邪魔をしている自覚はあるのか?災害を自己満足の場所に使うな、と答えておく。これがまさに機会費用の考え方だ。 最後になりましたが、今回の地震で亡くなられた方に哀悼の意を表します。また、被災地の一日も早い復興をお祈り申し上げます。 中嶋よしふみ FP、シェアーズカフェ・オンライン編集長