「老後2000万問題」は過去の話?物価高騰で最低でも「4000万」必要って本当ですか?
2019年、老後に2000万円が不足する「老後2000万円問題」が話題となりました。そして2024年には4000万円が不足するとして再びニュースとなったことをご存じの方もいることでしょう。わずか5年の間に不足金額が倍増した背景には、どのような要因があるのでしょうか。 ▼夫婦2人の老後、「生活費」はいくら必要? 年金額の平均をもとに必要な貯蓄額も解説
老後2000万円と4000万円の根拠とは?
老後2000万円問題は、金融庁の金融審議会 市場ワーキング・グループによる「高齢社会における資産形成・管理」の試算結果が根拠となっています。老後のおもな収入源は年金ですが、不足分は金融資産を取り崩さなければなりません。 同報告書では、毎月約5万円が不足する場合に20年で約1300万円、30年で約2000万円の取り崩しが必要と試算しています。この数値が、「老後2000万円問題」の根拠です。 ■なぜ不足金額は2倍になった? 年金だけでは4000万円が不足する根拠は、物価上昇率を考慮したものです。仮に、物価が年3.5%ずつ上昇するとしましょう。現在価値における2000万円を複利計算すると、1年後には2070万円になり、10年後には約2821万円、20年後には約3980万円となります。これが、老後4000万円問題の根拠です。 ■いきなり4000万円不足するわけではない 4000万円という金額に、衝撃を受ける方も少なくないでしょう。しかし、年3.5%の物価上昇が継続するとは考えにくいです。 総務省統計局の発表によると、2023年の消費者物価指数(総合指数)は前年度比で3.2%の上昇を示しました。過去10年間の前年度比は-0.2~2.7%で推移しており、物価が下がる年もあります。 次に、2023年時点の貨幣価値を40年前(1983年)の消費者物価指数で割った価値を見てみましょう。 106.6(2023年)÷81.0(1983年)=約1.3 貨幣価値は、40年前の1.3倍であることが分かります。40年経過しても1.3倍しか価値が変わらないので、数十年後の不足金額が現在の2000万円からいきなり倍増する可能性は低いと判断できるでしょう。