スマホのように、1人1台のロボット…AI進歩で「夢物語ではない」近未来
[AI近未来]第1部<1>
「今から持ち上げますね。どこか不快感はありますか」
ベッドに寝かせたマネキンに、人型ロボットが話しかける。左手を背中に差し伸べ、起き上がらせようとするロボット。キッチンを模したスペースでは、容器に入ったお茶を一滴もこぼさずコップに注いでみせた。
東京都新宿区にある早稲田大の次世代ロボット研究機構。産学の開発チームを率いる同大の菅野重樹教授(66)が、我が子を見守るようにその様子を見つめる。
1人に1台、一生寄り添う――。4月に開幕する大阪・関西万博では、そんなコンセプトの人型スマートロボット「AIREC(アイレック)」が披露される。
アイレックの頭脳にはAI(人工知能)が搭載されている。人間がロボットの手や腕を遠隔操作することで、AIが人の動作を学習。体を起き上がらせたり、トイレを掃除したり、様々なスキルを習得した。料理にも挑戦中。スクランブルエッグなら、フライパンで卵の固まり具合に合わせた混ぜ方をマスターした。
菅野教授は、アイレックが人の暮らしを支え、人と共生する社会を思い描く。
10年先には、人の指示を受けて洗濯物を畳んだり、火加減が難しいオムレツを作ったり、人を手助けする動作が増える。家事だけではなく、健康も管理。人の体に機器を当てて超音波検査を行い、病気やけががないか調べる能力も身につける。
そして2040年、アイレックは研究室を飛び出す。50年には社会に溶け込んで、人の意図をくみ取って動き回る。家の中では、住人の指示がなくても率先して好みの料理を作ったり、掃除をしたりする。住人の体調が悪く、歩くのも難しければ、車いすに乗せて病院に付き添う。
「スマートフォンのように、生まれた時からロボットが家庭にいて人を支える未来が待っている」と語る菅野教授。1970年の大阪万博では、携帯電話の原型「ワイヤレステレホン」や「動く歩道」が注目され、今や社会に広く普及した。スマートロボットの構想も決して夢物語ではない。