YMOチルドレンが描いた未来は今ここに 高野寛がデビュー35周年に発表した自身の作品について語る
「この数年書き続けた曲には、YMOや高橋幸宏さんの影響が強く滲んでいた」――。デビュー35周年を記念したアルバム「Modern Vintage Future」と、随筆集「続く、イエローマジック」(ミルブックス)を発表した高野寛さんに話を聞いた。 【写真】高野寛さんの別カットはこちら * * * 1980年代に世界の音楽シーンを席巻したイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)。テクノ音楽の黎明期を象徴するバンドであるのはもちろん、コンピューターやシンセを活用した音楽性、西洋と東洋を融合した世界観を表現したYMOの音楽は、今もなお世界中の音楽ファンを魅了し、数多くのアーティストに多大な影響を与え続けている。 ■YMOチルドレンの代表格 メンバーの細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一と交流があり、彼らから受けた影響を自らの音楽に昇華しているアーティストはしばしば“YMOチルドレン”と呼ばれる。その代表格の一人が高野寛だ。 高橋幸宏、鈴木慶一(ムーンライダーズ)主催のオーディションをきっかけに、1986年にデビューした高野寛。1994年には坂本龍一のワールドツアーにギタリストとして参加するなど、YMOメンバーとの活動も数多い。今年デビュー35周年を迎えた高野のニューアルバム「Modern Vintage Future」は、エレクトロ的な“打ち込み”主体の作品。彼自身のルーツであるYMOへのオマージュが散りばめられた作品となっている。 「Modern Vintage Future」の制作が始まったのは、2020年1月。コロナ禍がはじまる直前だ。 「2020年のお正月に、何となく打ち込みのトラックを作りたくなったんです。アルバムのボーナストラックに『20200102』という曲が入ってるんですけど、それが発端ですね。その前にいろんな流れがあったんですよね、振り返ってみると。まず、前回のアルバム(『City Folklore』/2019年)は冨田恵一さん(冨田ラボ)にサウンドプロデュースをお願いした作品で、かなり打ち込みが多用されていたんです。もう一つは2019年にYMOのトリビュート・コンサート(「Yellow Magic Children ~40年後のYMOの遺伝子」)のバンマスをやり、ライブアルバムのミックスを手がけたことで、自分のモードがテクノやYMOに寄っていて。何となく作ってみると、スルスルと8曲くらい出来て、それが今回のアルバムのはじまりですね。