神戸市立博物館で開催中の『デ・キリコ展』オフィシャルレポート
ジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)の初期から晩年まで100点以上を集めた大回顧展が、神戸市立博物館で開催中です。本展の意義と見どころをオフィシャルリポートで紹介します。 全ての写真はこちら 20世紀美術に衝撃を与えた孤高の画家デ・キリコ(1888-1978)。夢のような世界、不自然なモチーフの配置、顔のないマヌカン(マネキン)...。彼の作品は、一度見たら忘れられない不思議な魅力をまとっています。 神戸市立博物館では、デ・キリコのおよそ70年にわたる画業を、「イタリア広場」「形而上的室内」「マヌカン」などのテーマに分け、初期から晩年までをご紹介する大回顧展を開催中です。 その「謎」に満ちた世界を早速のぞいてみましょう! 会場入り口では、デ・キリコが好んで描いたモチーフであるアーチが皆様をお出迎え。 デ・キリコの不思議な世界観に入り込んでいくような、ワクワク感を味わうことができます。 さて、どんな作品が待っているのでしょうか...? ※本展では、一部の作品が撮影可能です(詳細は神戸会場公式HP(https://www.ktv.jp/event/dechirico/)をご覧ください)。 【第1章 自画像・肖像画】 自画像は、多くの画家にとって重要なテーマの一つです。自分の姿を描くことは、自己との対峙であると同時に、周囲からどのように見られたいか、という画家の意識を反映するものでもあります。 デ・キリコは自身を、豪華な衣裳で着飾った姿で描きました。まさに自信満々!といった感じです。 自分に酔っているようなこの表現、当時はかなり批評の的になったんだとか。 デ・キリコのユーモアあふれる人柄が感じられる、興味深い作品が展示されています。 【第2章 形而上絵画】 続く第2章には、デ・キリコの代名詞ともいえる「形而上(けいじじょう)絵画」が並んでいます。 まずご紹介するのは「イタリア広場」です。 緑色の空に、不気味で巨大な赤い塔。はっきりと浮かび上がる影のコントラストが、劇的な雰囲気を醸し出しています。人の姿は描かれていないのですが、よく見ると二つの人影が。何とも「謎」に満ちた作品です。 「形而上的室内」もデ・キリコを代表するテーマです。 定規やビスケットなど、様々なモチーフが不自然に配置されています。なぜこんな風に置かれているのか、考えれば考えるほど分からなくなってきますね...。 この頭の中がハテナでいっぱいになる感覚こそが、デ・キリコ芸術の醍醐味ですよ! そして顔のないマヌカンたち。 ちょっと怖いものからポップなものまで、様々なマヌカンが楽しめるのも本展の見どころの一つ。ぜひお気に入りのマヌカンを見つけてくださいね。 【第3章 1920年代の展開】 1920年代になると、デ・キリコはそれまでの「形而上絵画」に加え、「室内風景と谷間の家具」や「剣闘士」などの新しいテーマに取り組むようになります。 部屋のなかに家があったり、逆に家の外に家具が置かれていたり、そのちぐはぐな世界観にどんどんひき込まれます! 【第4章 伝統的な絵画への回帰―「秩序への回帰」から「ネオ・バロック」へ】 「形而上絵画」でよく知られるデ・キリコですが、実は古典絵画にも大きな関心をもっていました。過去の巨匠たちの作品を模写し、絵画の技法や絵具の層を強く意識した作品を手掛けたのです。本展では、「形而上絵画」だけではない、デ・キリコの幅広い画風をお楽しみいただけます。 【第5章 新形而上絵画】 何と90歳まで創作を続けたデ・キリコ。ほとばしる芸術家の魂は、老境に入っても衰えることを知らなかったようです。旺盛に作品を生み出し続けた彼がたどり着いた新境地が「新形而上絵画」です。自由で生き生きとした作品の数々からは、力強いエネルギーを感じます。 こんなに幅広いデ・キリコの作品をご鑑賞いただけるのは、本展ならではです! さらに、油彩画だけではなく、挿絵・彫刻・舞台美術もご紹介しています。 デ・キリコの世界観がそのまま三次元化された彫刻作品や、不思議でかわいい舞台衣装など、見どころがたくさん!ぜひこの機会に、デ・キリコ展を訪れてみてくださいね。 『デ・キリコ展』 会期:12月8日(日)まで 時間:9:30~17:30、金曜・土曜は20:00まで(入場は閉館の30分前まで) 休館日:月曜日、11/5(火) (ただし、 11/4は開館) 会場:神戸市立博物館 料金:一般-2000円 大学生-1000円