ドラッグはむしろ解禁すべき?「ダメ人間」には「あえて禁止しない」ことが効果的である「驚きの理由」
クローン人間はNG? 私の命、売れますか? あなたは飼い犬より自由? 価値観が移り変わる激動の時代だからこそ、いま、私たちの「当たり前」を根本から問い直すことが求められています。 【写真】「ダメ人間」に「あえて禁止しない」ことが効果的な意外な理由 法哲学者・住吉雅美さんが、常識を揺さぶる「答えのない問い」について、ユーモアを交えながら考えます。 ※本記事は住吉雅美『あぶない法哲学』(講談社現代新書)から抜粋・編集したものです。
ハーム・リダクション
他者にひどい危害を与えるわけではなく、もし損をするとしてもそれは当の本人だけ、という行為がある。そしてその行為の是非については、人々の価値観の相違ゆえに一概には決められないという場合が少なからずある。 思慮の浅い成人の性行為と思慮深い未成年者の性行為を比べて、前者はOKだが後者はNOと決めつける理由がどこにあるのか。 人々が欲求を止められないこと(性行為、博打、アルコール、煙草、ライトな麻薬など)を厳しく禁止しても、彼・彼女らはそれらを求めて闇の世界に向かってしまうし、そんな人々を取り締まるのもキリがなくて税金の無駄遣いになるばかりである。 ならばいっそのこと、できるだけ非犯罪化して、一応認めるが最悪の結果にならないようにそのような人々を導くという方法はいかがなものだろうか? このように、禁止による逆効果、取り締まりにかかるコストや刑罰など、総合的な危害や害悪をできるだけ少なくするために、従来犯罪とされてきた事柄を公認したうえでコントロールするという方法をハーム・リダクション(Harm Reduction、危害の減少)という。
コンドームの配布は「セックスの推奨」なのか
これは現代の欧米でさまざまな場面で導入されつつある。たとえば、未成年者におけるHIVの蔓延を抑えるために、自由な性交渉を禁止するのでなく、積極的に性教育を行い、場合によってはコンドームを配布することで危険を回避させるという例がある。 また米コロラド州では、2014年1月から嗜好用の大麻が合法化されたが、それは、膨大な予算を投入して規制してきたものの、一向に状況が改善せず税金の無駄遣いだという声があがったため、もともと解禁論があったことも手伝って非犯罪化してコントロールしようという方針転換のゆえであった。 これらの措置に対しては、もちろん強い反発や抵抗があるだろう。 たとえば、コンドームの配布によって未成年者にセックスを推奨することになるのではないかと批判する声もある。 しかし、措置が変わったからといって興味がないことをわざわざ始めるような者はそう多くないだろうし、それよりは無知で無謀な性行為から病に罹患するリスクを減らすという目的に直接つながるから無闇な禁止よりは有益だと思われる。 さらに連載記事<「真面目すぎる学生」が急増中…若者たちを「思考停止」させる「日本の大問題」>では、私たちの常識を根本から疑う方法を解説しています。ぜひご覧ください。
住吉 雅美