子どもから虐待被害を告げられたら? 知っておきたい、地域や専門機関に頼る方法
虐待による後遺症が目立つ子どもには専門的なケアを
虐待を受けている子どもは、最優先事項である「安全と安心感の確保」が達成されると、虐待による後遺症(ストレス反応)が目立ってくることもあります。状態によってはトラウマに特異的なケアが必要になります。 子どもの虐待が明らかになった場合、アセスメントに基づいて、福祉的な支援(親の養育能力を支え、子どもの安全と安心を確立すること)・心理的な支援(主に子どもの状態のアセスメントと心理的なケア)を以下の3つの機関と連携しておこなっていきます。 保護のための措置と支援の双方をおこなわなければならないむずかしさもあります。 【虐待を受けた子どもの専門的なケア】 ●医療機関やカウンセリング機関でのケア 医療においては、診断と治療がおこなわれます。治療には医療的支援と心理的支援双方が含まれます。カウンセリング機関は心理的支援をおこないます。 ●家庭や社会的養護のなかでのケア(生活) 生活のなかでの治療的養育と、児童心理士による心理的ケアの双方が組み合わされます。 ●幼保、学校などでのケア(教育) 見守りは、子どもが長時間を過ごす保育・教育機関とも連携しておこなわれます。 専門的なケアは、心理療法が主体です。育児スキルをあげるためのペアレントトレーニングなども導入され始めています。 【心理療法でおこなわれること】 ●セラピストと安全・安心な関係を築く 子ども中心療法、子ども中心プレイセラピーなど、子どものやりたいことを大切にして、共感的にお話をするセラピーやプレイセラピーがあります。ただし、子どもがトラウマを回避したがることと、遊びのなかや関係性で被虐待体験が再演されやすくなることに注意をします。 ●アタッチメント関係を促進する 子どもの調節障害は、重要な他者とのアタッチメント関係が成立しなかったことからも起き得ます。PCIT(Parent-Child Interaction Therapy :親子相互交流療法)は、ライブコーチングをおこないながら養育者と子どもに遊んでもらうことを基盤に、アタッチメントの質を高める心理療法で、外在化行動障害やトラウマ症状、解離症状などがおさまっていくエビデンスがあります。
白川 美也子(精神科医・臨床心理士)