お賽銭もPayPay 法人への送金機能で可能に 背景に広がる両替手数料の有料化
スマートフォン決済大手のPayPay(ペイペイ)は23日、神社や寺院でのお賽銭にPayPayの送金機能を使えるようにしたと発表した。これまでお賽銭は寄付行為に当たるとして、規約で認めていなかったが、8月に開始した法人向けサービスで寄付を受け付けている団体への送金が可能となった。小銭の両替の有料化が全国に広がっており、キャッシュレス化を求める寺社が増えたことも背景にある。 【画像で解説】「在庫がないためPayPayで返金します」は詐欺 被害を最小限に抑える対策は 23日には東京都港区の浄土宗大本山増上寺で利用を開始した。名古屋市の東別院ではすでに導入済みで、12月末までに川崎市の稲毛神社など、7つの寺社が導入する予定となっている。 PayPayでのお賽銭は、敷地内に設置されているQRコードを読み取って行う。金額を入力し、「お気持ちを送る」ボタンを押せば、おなじみの「PayPay」の音声が流れ、送金が完了する。賽銭を納めることができるのは本人確認をした利用者のみとなっている。 近年はメガバンクやゆうちょ銀行が両替手数料を有料化している。地方の金融機関にも広がりつつあり、手数料の増加が負担となっている。現金の回収にかかる人手の不足に悩むことなく、盗難のリスクも減らすことができると、多くの寺社がスマホ決済の導入を求めているという。増上寺の武智公英執事は「本山のひとつとしてチャレンジしていきたい。海外からの観光客の多くはキャッシュレス。海外の決済アプリにも対応できれば」と話した。 PayPayはこれまで、加盟事業者側は、決済での利用のみとし、送金を受け付けることはできなかった。今年8月に法人サービスを強化し、寄付を運営する団体なども送金を受け取ることができるようになったことで、お賽銭での利用につながった。 ただ、ネット上などにQRコードを公開し、寄付を募る行為は規約違反としている。敷地から離れた場所で賽銭を納めることはできないよう寺社にはQRコードの厳格な管理を要請しているという。 お賽銭のキャッシュレス化は、スマホ決済各社によって対応が分かれる。みずほ銀行のスマホ決済「Jコインペイ」は全国約80カ所でキャッシュレスお賽銭に利用されている。同行によると「銀行法で為替取引が認められており、商品の売買やサービスの提供を伴わない寄付にも使えると位置付けている」としている。一方、楽天は平成30年と31年、試験的に東京都港区の愛宕神社でお賽銭をキャッシュレス化したが、平時での導入には至っていない。
海外では、タイの寺院などでスマホ決済の導入が進んでおり、QRコードからお賽銭を納めることができる寺院も多い。国内では、非課税となるお賽銭と、お守りやお札の販売など課税対象となる収益事業の区分が寺社ごとに異なるため、寺社全体のキャッシュレス化がなかなか進んでいないのが実情だ。インバウンド(訪日観光客)の多くが小銭を持たず、キャッシュレス決済を利用する中、お賽銭のキャッシュレス化を求める声も高まっている。(高木克聡)