慶應志木高校 山中智之監督「文武両道を実現する上で大切なことは...」【文蹴両道】
――慶應志木独自の教育目標のひとつに「積極的な健康増進」があります。部活動とリンクしているようですね。 それだけではなく運動会や収穫祭(学園祭)などの学校行事をはじめ、うちの生徒は他の部活動も含め、みんなが一生懸命取り組んでいます。 ――サッカー部は主務が4人ですが、副務はいないのですか? 各部に主将とマネジャーを置くという学校の決まりがあるのですが、役割分担を想定しみたら、2人では負担が大きく4人にするとぴったりでした。副務という役職ですと縦関係が生まれるので、全員を主務にしたわけです。 ――勉強とサッカーの両立についてはどうお考えですか? 勉強にも体力や精神力は必要。サッカーに限定せず、運動することで集中力とメンタル力が備わるのではないでしょうか。 ――大学の系列でない進学校の生徒は授業と受験勉強に精を出しますが、慶應志木はここが違うようですね。 うちには中間テストがなく6月、11月、2月と年に定期試験が3度あるだけです。このテスト結果が大学進学時の学部選びに大きく関わってきますので、どの生徒も定期試験を控える頃には必死で勉強します。 ――利発な選手の集まりなので、指示したことも打てば響きますか? サッカーに必要不可欠なのは頭が柔軟で、なおかつ体力と技術が備わっていることです。考え方の柔軟さというのは、偏差値の高さとは少し違うところにあると思うので、うちはDFからFWまでいろんなポジションをトライさせています。 ――選手は自発的に指導陣にアプローチしてきますか? 以前に比べると少ないですが、サッカーに限らず自分の考えを主張できる生徒が多いので、指導はやりやすいですね。 ――練習に取り組む意欲、姿勢はどんなものでしょうか? 全員がどんなメニューも一生懸命こなしています。ただランニングの時には厳しい顔付きになる選手が何人かいますね(笑)。楽しみながら何でもやる生徒は伸びます。以前、他チームの監督の目に留まり「あの選手はどこの出身ですか」と聞かれたこともありました。指導者というのは、そういう選手を育てる楽しみがありますね。 ――近い将来の目標、夢をお聞かせください。 就任20年目に入りましたが、赴任当初はどうやったら埼玉のサッカーを勝ち抜いていけるのか?という思いを巡らせていました。経験しないと分からないことがたくさんありましたので、数多くの強豪校の胸を借りながら、チームとして情報を蓄えてやってきたのが前半の20年でした。近未来を考えた時、これとは違う手法、今までとは別のアプローチでチームと向き合っていくつもりでいます。 指導者がすべてにおいて引っ張っていくやり方は、やはり若い監督さんに多く見られるのかもしれません。私自身も経験値のなかった頃は選手とともに考えながらリードしていましたが、これからはもっと選手に任せる割合を多くして、より良いやり方ができるような準備を少しずつやっていけたらいいなと考えています。まず全国高校選手権予選のベスト8を目指し、先輩たちの成績を超えられるチームづくりをしていきたいと思います。 (文・写真=河野正)