茂木健一郎「『論理的思考』を身に付ける上で重要なポイントは…」脳科学の視点で解説
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。 今回の配信では「論理的思考」に関する質問に答えました。
<リスナーからの相談>
このところ「論理的思考」という言葉を耳にするようになりました。私は感情に流されやすく、論理的に考えることが難しいです。 夜、寝るときにふと思い出して「もっとこう考えればよかった」と反省することもあります。そこで茂木さんに質問です。論理的思考を身に付けるにはどのようにするのがよいのでしょうか?
<茂木の回答>
茂木:今の時代、論理的思考はたしかに大切だと思いますが、相談者さんが普段やっていることと離れているわけでもありません。 ロジカルシンキングで一番大事なことの1つは「エビデンス(証拠、根拠、裏付け)」です。たとえば「あの人は嫌な人だ」と思ったとしますよね。嫌な人だというエビデンスは何なのかと考えるのが、論理的な思考の第一歩です。そして、それはおそらくみんながやっていることだと思います。 たとえば、「相手は私のこと好きかもしれない」と思ったとします。エビデンスがあれば本当に好きだと思いますが、なければ自分の思い込みですよね。自分の思い込みと客観的な証拠を突き合わせるというのは、実は論理的思考の一歩です。 また、ロジカルシンキングで重要なテクニックの1つとして「枝分かれ」があります。たとえば、失敗したらどうしようと考えたとする。そうすると、人生は成功した側と失敗した側に枝分かれしますよね。そこでいつまでも不安でいるのが感情的な考え方です。 ロジカルシンキングの場合、「成功したらこうしよう」「失敗したらこうやって対策をしよう」と考えます。枝分かれさせておくとやるべきことが具体的になるので、「どうしよう」と感情で迷うことがありません。 エビデンスを考えて自分が思っていることが本当かどうかを検証するとか、人生で枝分かれを考えてどちらでも大丈夫なように備えておく。そういうことが僕はロジカルシンキングだと思います。 そして、論理的思考を身につけるために一番いい方法の1つは、本を読むことかなと思います。というのも、本は論理的に書かれていないと、読者の心になかなか届かないものだからです。 優れた本は、先ほど申し上げたようなエビデンスがあったり、枝分かれがちゃんとできていることが多いです。本を読むことでロジカルシンキングができると思います。新聞もいいですね。1つの出来事に対してエビデンスを重視して書いていますので、そこら辺も思考のパターンを身につけるうえでいいと思います。 いずれにしても、相談者さんは論理的な思考をやっていると思います。寝る前に「もっとこうすればよかった」というのも、過去に遡って訂正しているわけですから、論理的です。ぜひ相談者さんが今までやっていることを伸ばして、足りないところは補って、これからも頑張っていただけたらなと思います。 (「茂木健一郎のポジティブ脳教室」放送より)