【フォト・ジャーナル】高橋邦典 第4回 /#06 政治的武力抗争
1992年、アパルトヘイト(人種隔離政策)が終焉に近づき、初の全人種混合選挙に向けて、政党間での抗争が激しくなりつつあった南アフリカ。ナタール州のタウンシップで、ある夜、インカタ自由党の労働者宿舎が、彼らの留守中にアフリカ民族会議の若者たちによって焼き討ちにあった。翌朝僕が一人で出向くと、住処を失った男達は怒り、斧や鎌を持ち出して息巻いている。恐る恐る彼らに向けて何枚かシャッターを切っていると、一人が僕に耳打ちしてきた。 「みなだいぶ気が立っているから、あまり長居はしないほうがいい」 すでに心穏やかでなかった僕は、すごすごと退散を決め込んだ。まだ報道カメラマンとして僕が駆け出しだったころだ。(撮影:1992年12月)